高橋一生 撮影/伊藤和幸

「お芝居って、どこまでいっても“ごっこ遊び”と思われる方もいるかもしれないけれど、そうじゃない瞬間を求めてやっているのが俳優だと思っています」

 高橋一生(36)の勢いが止まらない――。今、女性たちが彼の一挙一動に熱い視線を送り、それに応えるようにさまざまなキャラクターを世に送り出している。

「僕、ここ10年くらい、風邪をひいてないんです。インフルエンザにもかかったことがありませんし」

 チューハイのCMでは、シェフ姿でコミカルに料理したり、ドラマ『カルテット』では理屈っぽく、面倒くさいけど、なぜか気になってしまうビオラ奏者・家森諭高を。そして、放送中の大河ドラマ『おんな城主 直虎』では主人公・直虎(柴咲コウ)の幼なじみ、“鶴”こと小野但馬守政次をミステリアスに演じている。

「政次は、井伊の家老であると同時に今川の目付でもあり、時には裏切ったように振る舞うなど、いろいろな表裏を使い分けなくてはいけない複雑な人間なんです。高橋一生として僕は、こんな政次を頑張っていこう、とヨシヨシしてあげたい(笑)」

 物静かに、言葉を選びながら自分の“思い”を語る。政次という人物を評して“夜道をひそかに照らしてくれる秋の月のよう”と言ったのは義理の妹・なつ(山口紗弥加)だが、それがそのまま高橋本人のイメージにも重なる。

「得していますね、僕(笑)。そんなイメージがついてくれたら、シメシメと思いますけれど、僕自身はそうでない一面もあるはずだし、ずるい一面もあります。いろいろな解釈をしていただけるのが、俳優冥利(みょうり)に尽きるかなと思います」

 高い演技力で、どんな役でも自分のものにしてしまうように見える高橋だが、

「最近、なんでもこなせますね、と言っていただくんですけれど、そんなに器用じゃないんです。自分の中からしかお芝居は出すことができないし、誰かの人間性にジャンプできない。

 役と自分自身の違いなども意識したことはありません。どんな作品の脚本を読むときでも、“これは僕だ”と思いながら、役に没入していくんです」

ヌードは「今やれることはやっておこうという精神です」

 先ごろは、女性誌『an・an』で披露したヌードも話題になった。

「今やれることはやっておこうという精神です。何かを想像して、それを高橋一生にやらせたいと思ってくださる方がいる以上、できる限りやりたい、と思っています」

高橋一生 撮影/伊藤和幸

 大河ドラマという長期の撮影に携わりながら、さまざまなオファーを受ける彼。役のうえでも頬がこけるくらいにやせたときもあったが、もしかして激務のせい?

「心配してくださり、ありがとうございます(笑)。ちゃんと体重管理もしています。頬がこけたという時期は、政次が井伊を裏切らざるをえなくなり、第12話で駿府から戻ってきたときのことでしょうか。父・政直(吹越満)の姿に重なるように、1週間半くらいで4~5キロ体重を落としました。

 それも役のうえで、意図的にやっていることです。短い睡眠でもよく寝られますし、めちゃくちゃ体調がいいんです」

 忙しいことを楽しんでいるようにも見える。その視線の先には、どんな自分を見ている?

「お芝居は単なるセリフの応酬ではない、と思っています。言葉の間、呼吸、アイコンタクト……。そこに人間の本質の部分が宿ると感じているので、そこを大事にしていきたいです。

 言ってしまうと、何もしないということが僕の理想なんです。“芝の上に居る”だけで芝居となる。以前からただそこにいるだけで何かを語れる、ということをやらなくてはと思っていましたが、年々その思いが強くなっています」

現場で半年―柴咲コウとの“呼吸”

「僕だけの感覚かもしれないですけれど、コウさんから最近、迷いがなくなってきている気がします。初めは僕の芝居をすごく細かく見てくれて“政次はどう考えているんだろう”ってある意味、探りながらだったと思います。それが“政次なら大丈夫”という感覚が目に表れてて。

 言葉の間、呼吸で本心を感じ取ってもらい伝えられるか……。柴咲さんとはお互い通じるものを確認しながら“お芝居”ができたと思っています」

『おんな城主 直虎』より (c)NHK

 5月7日に放送された18話で、井伊家に対する“真意”を直虎に垣間見せた政次。これからの政次について高橋は、「これまで以上に大事にお芝居しながら、直虎さんとの関係性をもっと深めていければ」

甘酸っぱい!? 初恋の思い出

 直虎へ秘めた思いを持ち続ける(?)政次を熱演している高橋。自身の初恋について聞いてみると、

「小学校5年生です。すごく可愛い子で、一緒に映画を見に行ったんですけれど、そこで彼女の鼻の下の産毛が気になってしまって(笑)。それとなく伝えたら、思いっきりビンタされてそのまま……。

 ただ純粋に、僕の好きな人がほかの人に否定されたくなかっただけだったんですけれど。僕の好きな人をバカにされたくないという、そんな感覚が芽生えたのは、あのときかもしれません」