黒木華 撮影/伊藤和幸

 大河ドラマ『真田丸』の好演も話題になった黒木華(27)。来年放送の『西郷(せご)どん』への出演も決定している彼女が、13日放送スタートの土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』で、NHK初主演! そのスタジオ収録に密着した。

「原作が愛されている作品なので、私で大丈夫かなと正直、不安もありました。この役を演じるにあたって、和食の先生のところで料理の基礎などを教えていただきました。かつおは5~6本さばきましたね」

 天涯孤独なヒロイン・澪が困難に立ち向かいながら、一流の料理人になるまでの姿を描いている今作。料理シーンは大変?

「江戸時代ということで、板場で座って作るというのが特に難しいです。普段は座って料理をしないので(笑)。あと撮影を意識しながら料理をするため、すごく必死になってしまい、笑うのを忘れたりします」 

 常連客の武士・小松原(森山未來)に、“下がり眉”と呼ばれるなど、今回のポイントは“眉”。

「下がり眉は澪のアイデンティティーだと思うので、鏡を見ながら練習もしていますが、メイクの力も大きいです。一見頼りなさそうだけど、運と芯が強い女性。まだ女性の料理人が珍しかった時代だけに、料理に対しては特に強い気持ちがあって、料理中は“阿修羅のように”と台本に書かれているほどです」 

 料理と演技。2つに共通する部分を聞くと、こんな答えが。

「“料理は料理人の器量次第”という台詞があるのですが、演技も自分の気持ち次第で、丁寧に向き合えばよいものになるというのは似ているのかなと思います。サボることもできるけど、それが料理の味だったり作品に出てしまう気がします」

 彼女がよりよい演技をするために、普段から心がけているのがフラットでいること。

「演じるうえで上がり下がりがあるといけないと思うので、常に自分でいられるようにしています。だからネットはあまり見ないですね。ネガティブな言葉、嫌な意見を見てしまったらヘコんでしまうので(笑)。役と向き合い演じることに集中し、普通でいることが大事かなって」 

 人との出会いに恵まれ、困難を乗り越えていく澪とは、重なる部分があるようだ。

「自分自身には何もなくて、みなさんに助けてもらってここにいるので、出会いの運はいいなと思います。最初だと、大学在学中に野田秀樹さんに出会ったことも大きかったですね」

料理シーンがキモとなるだけに、料理指導のスタッフも交えて段取りを確認していく 撮影/伊藤和幸

いちばんの心の支えは母親

 その後も蜷川幸雄や山田洋次など多くのクリエイターに愛され、キャリアを重ねてきた。そんな彼女にとって、いちばんの心の支えは地元に住む母親。

「どうしようもないほど弱気になっているときは母に電話します。まだ大丈夫だなというときは、好きなDVDを見たり、音楽を聴いて切り替えます」

 好きな母の味は?

「実家に帰るとリクエストするのは餃子。父と弟と私で包んで……というのが恒例になっています。餃子は、ひとりではなかなか作らないので、実家に帰るとつい食べすぎちゃいますね」

 最近、気分転換でよく見ているのは、意外にも若手芸人の作品。

「シソンヌさんの単独ライブに行かせていただいて以来、ライブDVDを流していることが多いですね。バナナマンさんも好きなので、作りこまれたコントが好きです。シソンヌさんも出ていたNHKのコント番組『LIFE!』も好きなので、続編のオファーがあればぜひ!(笑)」

 舞台となるのは江戸時代だが、人とのつながりの大切さに時代は関係ないと語る。

「自分ひとりでは乗り越えられない困難もたくさんありますが、この作品で描いている絆(きずな)といったテーマは、いつの時代でも響くと思います。見ている人が少しでも前向きになれるお芝居ができたらいいですね。ドラマの終わりに、劇中で出てくる料理の作り方を紹介するミニコーナーもあるので、和食もそんなに難しいものではないと知ってもらえると思います」

<ドラマ情報>
土曜時代ドラマ『みをつくし料理帖』
NHK総合・毎週土曜午後6時5分~。出演/黒木華、森山未來、永山絢斗ほか