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夫婦でもお墓は別がいいと考える人が増えている

 配偶者が死亡した後に、「姻族関係終了届」を役所に提出することを、「死後離婚」と呼ぶことが多い。配偶者の血族との関係を結婚以前の状態に戻すことができ、新しい人生を歩みだすために注目されている。

 しかし、死後離婚で解決しないのが、お墓の問題だ。

「今は夫の親族と一緒のお墓に入る意味がわからないと感じる方が多いです。また、死んでまで夫の面倒をみたくないと考える方も」(終活コンサルタントの吉川美津子さん)

 生前の夫と仲がよくても、お墓は別がいいと考える人が増えているそう。

「配偶者と別の墓に入ることは“死後別居”と呼んだほうがしっくりきます。最後は実の親とともにいたいと思う方も多いです」(吉川さん)

「お墓のことは、生前に夫とよく話し合っておいて。夫の親族にも夫から話して理解してもらうほうが、死後離婚よりもスムーズ」(夫婦問題研究家の岡野あつこさん)

希望どおりにしてもらえるとは限らない

 自分の墓については、残された人に任せるしかない。だから、生前の話し合いが重要。

遺言でお墓の希望は出せますが、必ず実行しなければいけない項目ではないんです」(吉川さん)

 そのため、必ず希望どおりにしてもらえるとは限らない。

「夫は墓に入っていて、自分は散骨にしてほしいと思っても、残された人が散骨は寂しいからやめよう、やっぱり親父と一緒のお墓がいいよと考えてしまうことがあったりします。ただ、祭祀継承者という、仏壇やお墓を管理する人を1名指定することができます。自分のお墓や葬儀の希望を、祭祀継承者にわかってもらうことが大事ですね」(吉川さん)

 墓については、思いどおりにならないのが現実のよう。

〇〇家の墓? 自分の終の棲家? 残された人のため?

「実は、〇〇家の墓と書かれた大きな石塔を建てて、そこに家族の遺骨を納める形のお墓が定着したのは、明治以降。それまでは、地域によって、埋葬・納骨方法も全然違っていたんです」(吉川さん)

 だから、今の形に必要以上にとらわれることはない。

「ただ、例えば、散骨が自然に還るイメージがあって今は人気ですが、遺骨をまいてしまって少ししか手元に残らないことで遺族が寂しく思う場合もあります。お墓参りができないから、本当にこれでよかったのかなと後悔したり。海に散骨したけど、よく考えたら泳ぎが苦手だったのにと遺族が思ったりということも」(吉川さん)

 今はひとり用のお墓があり、夫も自分も同じ区画の別の場所に入ることで、残された家族が参りやすくて、なおかつ死後別居がかなう形もある。ずっと管理を任せられる、永代供養も人気だ。

お墓を自分の終(つい)の棲家(すみか)として考えると答えが出ないことがあります。それよりも、残された人に、人の生死というものをお墓を通じて考えてもらうとか、人の縁をどうつなぐのかを考えるといいと思います。先祖からのご縁があって自分たちがいるのだと、残された人が心強く思えるような形がとれると、いちばんいいのではないでしょうか? 実際に、人生の壁にぶつかったときに、お墓参りに来て勇気づけられる方も多いですから」(吉川さん)

<プロフィール>
吉川美津子さん◎終活コンサルタント。葬儀やお墓、終活の専門家として、コンサルティングや講演などを行う。『死後離婚』『お墓の大問題』ほか、著書多数。

岡野あつこさん◎夫婦問題研究家。NPO日本家族問題相談連盟理事長。自身の離婚後に、夫婦問題のカウンセラーとして、3万件以上の夫婦問題の相談に携わってきた。