目のストレッチ&速読トレーニングによる“速読脳トレ”が、認知症の改善やリハビリから短期間で回復することが検証され、注目を集めている。

 

頭の回転をよくして、脳を活性化

「親や自分の認知症が心配」「疲れがなかなかとれない」「やる気が起きない」─そうした不調を改善してくれる方法として注目されている、速読脳トレ。

 速読コンサルタントの呉真由美さんは、

速読というと、本を読まなくてはいけないと思われるのですが、そうではなくて、単純に頭の回転を上げる、速くするトレーニングなんです。頭の回転が速いと、仕事の作業効率がよくなります。そうした作業効率の違いを、文章(文字)量で計って、トレーニングによってどう変わったのか。“頭の回転の見える化”をしているんです

 頭の回転がよくなることで、脳が活性化される。

 理学療法士が、速読脳トレをリハビリに取り入れたところ、「認知症の方の徘徊など問題行動が落ち着いた」、「認知症判定テストの点数が正常値に戻った」、「大ヤケドを負い、寝たきりになるかと思われたのに、1か月で退院」といった、めざましい回復をするケースも報告されているという。

読めない速さで字面を目で追う

 ちょっと驚きの効果を見せる、速読脳トレだが、その方法は、意外と手軽にできる。

 まずは、トレーニングの前に、読書速度を計っておく。

 本を6秒間、黙読し、読めた最後のところに印をつけて、文字数を数える。トレーニング前に文字数を計っておくことで、トレーニング後との文字数の違いがわかる。

「最初は、普段の感覚で読んでください。読みやすいものなら、本、雑誌、新聞、活字がたくさん書いてあるものであれば大丈夫です」(呉さん、以下同)

 次は、脳に情報を送るための入り口である、目のストレッチを行う。

(1)目を左右に動かす

 顔の横10センチに、両手の人さし指を立てる。その指先を交互に目で追う。正面を向いたまま、眼球を右・左・右・左と素早く動かす。左右合わせて12回くらいを目安に行う。

(2)目を上下に動かす

 おでことあごの前に人さし指を水平に置く。正面を向いたまま、眼球を上・下・上・下と素早く動かす。頭や顔が動かないように、上下合わせて12回くらいを目安に行う。

(3)ピントを前後に合わせる

 目のピント調節に使う筋肉(毛様体筋)のストレッチ。人さし指を顔の前で、前後に立てます。奥・手前・奥・手前と交互に指先を見る。手を入れ替えて再び交互に行う。それぞれ12回くらいを目安に行う。

(4)視野を広げる

 顔の少し前の両側に両手を広げる。その手を少しずつ後ろに引いていき、見えなくなるギリギリでいったん止める。さらに1センチほど手を引いて、完全に見えなくなった手を見ようと意識する。なんとなくでも手の存在が感じられたら、手を下ろす。

「普段の生活では、1点を集中して見ていることが多いので、血行が悪くなっています。そのため、目の筋肉を動かすことで、血流がよくなり、見えやすくなります

 トレーニング開始。本を、読めない速さで6秒間、素早く目で追う。次に、読み始めに戻り、もう1度、同じことを繰り返す。さらに、もう1回、繰り返し、トレーニング前に印をつけた文字数の3倍を目安に追う。

「読めない速さで、目から脳に情報を送ることで、脳が活性化されて、処理能力が上がります」

 目のストレッチ&速読トレーニングをした後に、本を6秒間、黙読。トレーニング前との文字数の差を計る。

歯磨きをする感覚で朝刊を読む前に行う

 記者も実践してみたところ、トレーニング後は、6秒間に読めた文字数が増加。最初よりも6秒間が長く感じられて、頭がすっきりした感覚になった。

「(トレーニングによって)処理能力の高いエンジンになったので、同じことをしているのに、(頭の)調子がよくなって、楽になったんです」

 ただ、速読トレーニングをするときに、どうしても文字を読んでしまい、字面を追う、見るということに、ちょっと苦労した。

読むことが目的ではなく、あくまで脳を活性化させるためのものなので、慣れることが必要です。そのためには毎日、歯磨きをするような感覚で、続けてもらうことがいちばん大切です。

 例えば、朝刊を読むとき、紙面を2、3回ざっと見たあとで、普通に読むだけでもトレーニングになります」

<プロフィール>
呉真由美(くれ・まゆみ)さん◎速読コンサルタント。“誰にでもできる頑張らない速読”をモットーに全国でセミナーを開催。小学生からプロスポーツ選手まで多岐にわたって指導。著書に『スポーツ速読 完全マスターBOOK』『小中学生のための親子で簡単 速読トレーニング』など

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