食もワインもおいしいパリ

 今回の原稿は、パリからお届けします。

 パリ……世界中出張に出掛けますが、やっぱりこの街に来ると盛り上がります。

なぜパリを訪れると「気分アゲアゲ」になるのか

 食べ物がうまい、ということがおそらくいちばんの理由なんだと思うんですね。その辺のカフェに入っても間違いなくうまいものにありつける。

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 さらにワインが安い。もちろん、ボルドーだとかブルゴーニュの「グランクリュ」(特級)なんて言い出せば高いわけですが、「ノンミレジメ」「ノンヴァン」(特定年に特定地区で醸造された高級ワインではないもの)どころか、「まるでラベルのないもの」(認証を取らないので、その分安い)などが、破格の値段で飲めちゃうわけです。

 カラフェ(主に若いワインを入れる器)で3ユーロ(375円前後)とかですから、これはやっぱりすごい!!

 最近は、日本でもいいワインが結構生産できるようになってきましたが、「この値段でこの品質が飲める」となると、やはりフランスに軍配が上がります。水より安いとかいわれてますが、このあたりはフランスがワイン文化の中心だ、ということがはっきりします。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 それからこれは街づくりにも大きな教訓を与えるわけですが、やたら高い建物が一切なく、高さがほぼ均一にそろえられていることからくる、街並みの統一感。これはどうしてもほかの都市ではマネできない。

 これによって、町の景観が完璧に保たれていて、そこを歩く人間は極めて快適に感じ、さらにいつも言っているように、そこに住んでいる人が何より楽しく、プライドを保てる何かが存在する。

 これが本当に人間が生き生きとする都市づくりであり、特に東京はそのはるか逆サイドに存在する都市であると言わざるをえない。経済性から見れば優秀な都市でしょうが、人間らしく生きられる都市かどうかと問われれば、対極にあると言われても仕方がない。

 なにせ今大人気の「ギンザシックス(GINZA SIX)」を設計した人たちが、「銀座のライバルはドバイだ」、などと堂々と言っちゃうくらいですからね。銀座をドバイのようにして、どうするつもりなのか。

 銀座という日本では数少ない商業カルチャーの伝統が残っている街をドバイに……もう、これは頭が悪いとしか思えない。銀座は銀座、であり続けてほしいと思う(ちなみにギンザシックスには銀座ゆかりの老舗は入っていない)とパリにいるとつくづく思うわけですね。

 そして働き方改革についても、言いたくなることが出てきます。

 ここにいるといつも考えさせられるんですが、平日にもかかわらず、みんな昼間からばんばん酒飲んでます。これでも昔より飲まなくなった、と言ってますから、「昔はどんだけ飲んだんだよ」と思いますね。

パリにあって東京にないものとは⁉︎

「あんた、バカじゃないの!」と一喝されたワケ

 今ランチをしているわれわれの隣の席で飯食ってワインをのんでいる女性2人組はなんと某フランス大手の銀行員!!(日本でいうと三菱東京UFJ銀行のOLが昼から酒飲んでる感じ……)。

 あんまり楽しそうなので、「仕事は楽しいですか?」と聞いたら「あんた、バカじゃないの、仕事が楽しいわけないでしょ!こうして昼から友人と食事をするのが楽しいから、嫌な会社に毎日来てるの!」と一喝されました。おっしゃるとおり……。

 多分日本だと、「昼からOLの分際で酒なんか飲みやがってとんでもねー」とかいう話になるんでしょうが、人生を楽しむことを最大の目標とするフランス人にとって、これは当たり前の光景であります。

 一緒にいる私の友人も決して給料が高い、という職種にいるわけではありませんが、1年間思い切り節約しておカネを貯めて、1年に一度の海外旅行に家族で行くことを楽しみにしています。生活を楽しむために仕事をする、という意識が徹底していますね。

 日本では、仕事は苦しんで当たり前で、額に汗をして働く、という表現がありますが、これだけイノベーションが進んだ現在、むしろ額に汗なんてかいている場合ではなく、どれだけ楽に働くか、が課題になってきているのではないでしょうかね。

 昼から酒飲もうぜ、と推奨する気はありませんが、日本人ももう少し人生楽しく暮らすことを考えたほうがそろそろ良いのではないか、と当地では常々思うわけであります。

 フランスだって、GDPは日本の約半分ですが、だからと言って国が潰れるわけでもありませんし、いろいろ批判はありますが、それで十分豊かにやっていける。多少収入が下がったって、どっちの生活がいいかはもう答えが出ているのではないでしょうか。

「人生を支えるための仕事」という考え方ができるか

 働き方改革は結局、国民の皆さまの意識にかかっている。昼から酒飲みやがってとか、散々有給をとって、休みやがって、という批判をやめることからスタートする必要があります。国ができるのは、あくまでそれを支えるための制度を作ることであって、たとえば保育所の増設という問題であったり、学費を無償化する、などという方策で、そういう生活を後押しすること以外にありません。

 国民も何でもかんでも国に頼るのではなく、まず意識から変えていくことが必要でしょう。そしてそこに初めて「文化」というものが「醸造」され、それが継承されていく。日本には日本ならではのものがあるはずで、仕事仕事と追い立てられていては、そんなことには思いも至らなくなってしまいます。

 仕事のための人生ではなく、人生を支えるための仕事をする、という考え方は今われわれに特に必要なことなのではないでしょうか。

 もはやGDPの額を競っている場合ではない。GDPには表れない、本当の豊かさを追求していくことが必要だ、とここにいると考えさせられます。ということで、昼からワイン飲んで道行く人を眺めている、という幸せな時間を過ごしております。

 こんなときに(パリでのんびりしているのに……)私に回ってきたのはううっ、何と!安田記念(6月4日、東京競馬場11R)……。昨年8番人気のロゴタイプが突っ込んできて、すべてが砕け散った悪夢のレースではありませんか!正直このレース、いい印象がまったくないんですよね。

安田記念は1番人気から…うう気が重い

 そうは言っても調べてみると実は1番人気の馬は2015年にモーリスが優勝しております。同馬は昨年も2年連続で出走、1番人気でしたが連対(2着)を果たしており、特に成績が悪いわけではない。

 むしろよく来ているほうで、問題はどうやらそれ以外にありそうだ。特に3着馬は過去10年で9番人気以下というのがなんと7頭も激走しているのは特筆に値しよう。うーむ、これは難しい……。

 こうなると、軸馬は1番人気でよさそうだ。2、3着を薄めに狙って3連単、あるいは3連複というのが馬券的には正しいのかもしれません。

 となると、クリストフ・ルメール騎手騎乗のイスラボニータ、マイル戦に特化しつつあるエアスピネル(武豊騎手騎乗)あたりが軸になりそうですし、2連覇がかかるロゴタイプ(田辺裕信騎手)も忘れられません。もともとこの距離が合っている、といわれているステファノス(戸崎圭太騎手)あたりまで手を広げる必要があるかもしれません。

 そして究極の穴馬、しかも3着あたりに飛び込んでくる奴を探すという作業が必要で、これはまた時間をかけて検討する必要がありそうです……やっぱり、このレース、気が重いですね(笑)。


ぐっちーさん・本名:山口正洋(やまぐち・まさひろ)◎投資銀行家。1960年東京都港区生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。丸紅を経てモルガン・ス タンレー、ABNアムロ、ベア・スターンズなど欧米の金融機関を経て、ブティック型の投資銀行を開設。M&Aから民事再生、地方再生まで幅広く ディールをこなす一方、「ぐっちーさん」のペンネームでブログを中心に大活躍。2007年にはアルファブロガーを受賞、有料メルマガも配信中。さらに AERAやSPA!で連載をもちつつ、テレビやセミナーでも人気。主な著書に『なぜ日本経済は世界最強と言われるのか』(東邦出版)、『ぐっちーさんの本当はすごい日本経済入門』『ヤバい日本経済』(後者は共著、いずれも東洋経済新報社)などがある。競馬予想も一流。一方でメインレースはほどほどで、平場の条件戦などを好む。