用具の「鋤簾」と「箕」を借りて係員のアドバイスを受けながらの発掘体験

「何か出てきたー! お父さん、これって何だろう!?」

 方々から聞こえる家族連れや女性たちの興味津々な声。驚くなかれ、なんと、みなさんが熱心に行っているのは発掘調査!

 現在、静岡市は徳川家康の人生最後の居城となった駿府城跡の発掘調査を実施しており、“体験発掘”と題して、“期間限定”で一般の方も参加できるようにしているんです! 一般のみなさんが、江戸時代の古銭や瓦などを発見するケースも珍しくなく、実際に取材した日も数人が出土品を発見していたほど!

 それにしてもなぜ、このような貴重な体験が可能なんでしょうか?

静岡市では今回の発掘調査を観光資源として活用しようという動きがありました」と教えてくれたのは、静岡市歴史文化課の水島隆弘さん。

 駿府城跡の発掘調査は、通常、立ち入り禁止となる現場を常時公開し、一般の方に歴史発見に触れてほしいという静岡市関係者の強い思いから、このようなレアな企画が動きだしたのだとか。また、

発掘エリアが広いこと、さらには出土するものも瓦や石垣の石など比較的、頑丈なものが多いため、専門家ではない一般の方でも参加が可能と判断しました。さまざまな条件がクリアできたことで実現可能になりました」(水島さん、以下同)

 発掘調査に一般人が参加できることは本当に珍しいことで、しかも、発掘できる場所もスゴい! 昨年8月から始まった発掘調査では、高さ最大5・6メートル、南北約68メートルの天守台石垣の一部が出現。天守台の大きさだけでいえば、あの江戸城をしのぐ(!!)とも言われており、そんな歴史的にも大注目の天守台跡で発掘体験が行えるというからビックリ!

自分の発掘体験が新たな歴史の一部に

江戸城よりも大きいといわれる駿府城天守台の石垣

 体験内容は、駿府城の紹介ビデオを視聴&体験発掘&瓦の拓本体験、あわせて約1時間。体験発掘は、ヘルメットを装着し、「鋤簾(じょれん)」と呼ばれる鍬のような道具で丁寧にかき出した土を、バスケット形状の選別用農具「箕(み)」に入れていく。運がよければ、土の中から瓦などを発見できるという具合だ。

 埼玉県から子どもと一緒に参加したというお父さんは、「子どもも私も歴史が好きだったので応募しました。歴史の一部に自分が参加していると思うとロマンを感じます」

 と貴重な体験に大満足の様子。家族連れだけでなく、歴女と思わしき若い女性も数多く参加。思い思いに土をかき分け、「想像以上に発掘調査って大変なんだね。でも、夢中になっちゃうね!」なんて、参加者同士でいつしか声をかけあう姿は、歴史を発掘している者同士だからこそ味わえる連帯感かも!

県外からの問い合わせも多いので、多くの方に駿府城の魅力を発信する機会にしたい。できるだけたくさんの方に体験してほしいのですが、発掘できる面積に限りがあるため、毎年行えるわけではありません。今年は10月まで行っていますので、ぜひ参加して発掘の面白さを体験してみてください」

石垣復元のイメージ図

 静岡市は、天守台復元を視野に入れて、発掘調査を行っているという。

 自分の体験したことが、文字どおり再建の礎として刻まれることは誇らしくもあるはず。将来、駿府城の天守台が復元されたときに、「自分も関わったんだなぁ」なんて思えるとワクワクしません?

 徳川家康の居城発掘に自分も参加した。そんなタイムトラベルができる機会をお見逃しなく♪