空前のペットブームと呼ばれて久しい。犬・猫の飼育頭数は、いまや15歳未満の子どもの数を上回るほど。テレビや雑誌では頻繁に特集が組まれ、SNSから人気に火がついたペットも数知れず。
なかでも、ネットで圧倒的支持を集めるのが猫。ツイッターで22万超のフォロワー数を誇る“ホイップちゃん”、しょんぼり顔が愛らしい“ふーちゃん”など、企業とコラボしたグッズまで販売される人気ぶりだ。
未曾有の猫ブームはなぜ起きた?
「かつて社会学の世界では、“ペットは家族か否か”との論争がありました。20年ほど前は“家族の一員”“ペットは家族とは呼べない”が半々で、大まじめに議論していたんです。しかしこの20年の間に、飼い主側に前者の意識がどんどん強くなりました。それに押される形で、いまでは学者も、ペットを家族の一員とみなす風潮に変わってきています」
そう話すのは、東京大学大学院の赤川学教授(社会学)。ペットを取り巻く状況は、時代に応じて変化しつつある。
例えば、飼育頭数。猫人気に沸き立つネットとは裏腹に、リアルの世界では長年、ペット界の頂点に犬が君臨していた。ところが、ここへきて状況が少し変わってきたようだ。
一般社団法人ペットフード協会の調査によれば、昨年の全国犬・猫の推計飼育頭数は、犬が892万頭、猫が952万6000頭。初めて猫の飼育数が犬を上回ったのである。
いまや空前の猫ブーム。その経済効果は2兆円超といわれ、2年後の東京五輪をしのぐほど。ネコノミクスなる言葉も誕生した。なぜ未曾有のブームが続いているのだろうか?。
「猫人気に火がついたのは、おおよそ10年前。テレビなどメディアの影響もありますが、それよりもやはり、SNSの影響のほうが大きいと思います」
と赤川教授は指摘する。とりわけ有力視されているのが、室内飼いのメリットを重視する説だ。
「基本的に室内飼いである猫は1日中、家の中で過ごすため、写真や動画が撮りやすい。ネットの猫人気と相まってインスタ映え、動画映えするし、ほかの人もつい“いいね”を押してしまうんですね」(赤川教授、以下同)