竹中直人監督作品10本目の映画『零落』が、3月17日に全国公開される。
「完成していちばんうれしかったのは、浅野いにおさんが気に入ってくださったことです」と竹中監督。『ソラニン』の浅野いにお原作の同名漫画を映画化した。
豪華な「共犯者」が集結
主人公の深澤は8年間の連載漫画が終了し鬱屈した毎日を過ごしていた。SNSでの酷評、担当編集者とは軋轢が生じ、アシスタントからはいわれのないパワハラを追及され、多忙な妻とはすれ違いの生活を送っていた。そんなある日、風俗嬢と出会い、落ちぶれていた深澤は人生の岐路に立つ。
原作にほれ込み、製作できるかもわからない段階からロケハンをするなど前のめりに取り組み実現した。
「原作を読んで、これは絶対、映画にしたいと思い“共犯者”を集めました」
100%のキャスティングという深澤役を斎藤工、風俗嬢役を趣里、妻役をMEGUMIがそれぞれ演じるほか玉城ティナ、安達祐実、しりあがり寿らが出演する。
斎藤とは山田孝之と3人で、2021年公開のオムニバス映画『ゾッキ』を監督した。
「いつも3人で宣伝していましたが、ある日、孝之が別の仕事で来れなくなって、工と2人だけの日があり、工に『零落』を映画にしたいと伝えたんです。工も原作を読んでいて“ぜひ、やりたい!”と言ってくれて。“やったぁ! よし! やろう!”と勢いがついた。工のひと言がなかったら動けなかった。工が主演してくれれば百人力で、(映画に)出資してくれる人も必ずいると思いました」
第一線で活躍する役者だが、監督のとき演者にはどんなディレクションを?
「背景をアレンジしていくのが監督の仕事だと思います。ロケーション、美術、照明、カメラワーク、そして音楽が作品の世界を作っているので、役者には芝居をしないでほしい。ただそこにいてくれればいいと伝えます」
監督像に思い浮かべるのは、映画『時代屋の女房』『塀の中の懲りない面々』『ペコロスの母に会いに行く』などを手がけた故・森崎東監督(享年92)の言葉だ。