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ー この人はお笑いを熟知している

 

 かもめんたる・岩崎う大が、注目のお笑い芸人の今後を予想する連載企画。今回の芸人はみなみかわ。

この人はお笑いを熟知している

 本日ご紹介するのは芸歴的にはすでに中堅なのですが、『週刊女性』の読者の皆様も最近テレビでよく見るなあと思っているであろう芸人「みなみかわ」を紹介したいと思います。

 コンビでのデビューは古く、漫才もコントも定評のあるコンビ「ピーマンズスタンダード」で活動をしていました。思えば、みなみかわくんは僕が見てきた中でも何度も売れかけていました。

 最初は、10年以上前に深夜番組の『あらびき団』「韓国のバックダンサー・ペ」というピンのキャラで、ペさんが漫談をするという1人コントをやっていたときです。この切り口が非常にポップであり、マニアックでもあり、僕はこのコントを見た瞬間に「ああ、この人はお笑いを熟知しているな」とおののきました。

 てっきり、このキャラひとつで順調に売れていくのだろうと思っていましたが、そうはなりませんでした。

 その後、都内のお笑いライブで、かもめんたるとピーマンズスタンダードは共演する機会がよくありました。

 そのときのネタはポップというよりは、渋めのネタで、「ああ、やっぱりこの人は面白い人なんだ」と、確信しました。

 当時は今よりネタ番組も少なく、YouTubeもないようなお笑い不況時代だったので、売れるためには賞レースで頑張るというのが唯一若手に残された手段でした。

 しかし、漫才もコントも確実に面白いコンビなのになかなか賞レースなどで成果が出ないみなみかわくん。人間のネガティブな部分に焦点を合わせたネタは、僕が作るネタにも似ていて、勝手にシンパシーを感じると同時にライバル視しておりました。

 今思うと、みなみかわくんのお笑いには年齢のわりに確固たるものがありすぎたのかもしれません。

 その後も、みなみかわくんは「システマというロシアの格闘技の呼吸法を使えばどんな打撃も痛くない」という芸でハネました。いろんなお笑い番組に出て、このときも僕は「いよいよ、みなみかわくんが売れる」と思っていましたが、結果そうはなりませんでした。

 コンビ解散後はヒコロヒーと組んでM-1グランプリに出たり、所属事務所の松竹芸能をディスって注目を集めたり、そのたびに僕は「いよいよ、いよいよだ」と思うのですが、ブレイクスルーには至らず、それでも、ライブなどで一緒になるみなみかわくんはMCなどでも大活躍し「やっぱ面白いなあ」と惚れぼれさせてくれるのでした。

 そんな彼が、実の奥さんが東野幸治さんや千原ジュニアさんに直接DMしてYouTube番組に出るというキャラで何度目かの脚光を浴びています。適度に年齢を重ねたみなみかわくんと時代の波長がようやく合致したのでしょう。

 今度こそみなみかわくんは売れました。今まで何度も世に出かけたことで、踏んできた場数がかなりあったことなども今回の飛躍に欠かせなかったと思います。

 そして、みなみかわくんが名付けの親であるさらば青春の光や、同じ松竹芸能のヒコロヒーなどの活躍があることも無関係ではないでしょう。いつ見ても面白かったみなみかわくんですが、今後はさらなる活躍によりそれが全国区になり、そうすれば彼の中の確固たるものを人々が求めるはずです。

 みなみかわくんが何を発言するか? 人々が気になってしょうがないカリスマになる日も遠くないことでしょう。

 日本を代表する司会者になっていてもおかしくないと予報させていただきます。

岩崎う大 1978年東京都生まれ。早稲田大学卒。かもめんたるとして槙尾ユウスケとコンビを結成。キングオブコント2013年優勝。お笑い芸人だけでなく、脚本家、放送作家、漫画家として多彩に活躍中