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ー 「方言の奥の深さと、山形の素晴らしさを伝え続けています」
ダニエル・カールさん 撮影/矢島泰輔

 “山形弁を話す外国人”として、バラエティー番組に引っ張りだこになったダニエル・カールさん(64)。タレントになったのは、「ほ~んとに偶然なんだ」と山形なまりで打ち明ける。

「方言の奥の深さと、山形の素晴らしさを伝え続けています」

「僕は、英語指導主事助手として、3年間山形県に赴任したんだけど、そのころは全国に70人ほどしかいなくて、山形県は僕1人だけ。県内の中学校と高校が210校くらいあったから、ほぼ1年をかけて1校ずつ訪れてねぇ。

 当時は、外国人を見たことがない生徒ばっかりだったから、みんな目を丸くして。明治時代ってこんな感じだったんだろうな~って(笑)」(カールさん、以下同)

 まるで黒船──だが、ダニエルさんの授業は行く先々で歓迎された。

「どうすれば生徒さんたちがリラックスできるかを考え、ドナルドダックのものまねなどで挨拶すると大ウケ。緊張を解きほぐした後に、授業を始めるとみんな前のめりになってくれる。楽しませるために何をしたらいいかという経験は、タレント活動をする際にも生きましたねぇ」

 英語指導を終えると、カールさんは上京。広告代理店に勤務し、営業を担当した。

「手前みそだけど、優秀なセールスマンだったんだよ。というのも、この顔で山形弁を話すからみんな覚えてくれるの(笑)。その後、翻訳や英語の社内研修を手がける会社を自分で設立するんだけど、通訳の仕事をした際に、テレビ番組のプロデューサーが「山形弁が面白い」と評価してくれて。あれよあれよとタレント活動が続いて、気がついたら山形弁を話すヘンな外国人タレントになっちゃった」

 カールさんの妻は、山形県米沢市の出身。東京と山形を往復する生活を続け、山形弁研究家として山形の魅力を発信し続けてきた。

「日本語って面白い。『YOUは何しに日本へ?』(テレビ東京系)のナレーションをやると、いつもイントネーションを直されて。まだまだわからないことが多くて勉強になるんだなぁ。日本には方言という文化があって、そのグラデーションが素晴らしいんです。例えば山形県には、『ありがとう』の言葉が地域によって変わって、4つもある。米沢は『おしょうしな』、酒田は『もっけだの』とかね」

 こうした日本の魅力を伝えることもカールさんのライフワークのひとつで、現在は講演を中心に活動しているという。

「日本と外国の文化の違いを話すこともあれば、防災・防火について話す機会も多いです。僕の父親が、消防署長を務めるなど55年にわたってアメリカで消防の仕事をしていたので、僕もとても関心がある分野。

ダニエル・カールの消防基金チャンネル!』(YouTube)では、その備えとなるような知識や情報を発信しているのでチェックしてくれたらうれしいです。

 これからも日本の素晴らしさを伝えていければなって思っています。ただ、僕が山形のお国自慢をするように、み~んな、もうちょっと日本の自慢をしてもいいんでねぇのって思う(笑)。すんばらしい国だよ、日本は」

ダニエル・カール●1960年、米国カリフォルニア生まれ。2度の来日を経て、大学卒業後、文部省(当時)英語指導主事助手として3年間山形県に赴任。その後上京し、会社員を経て翻訳・通訳会社を設立。山形弁を話す外国人として注目を集め、テレビ・ラジオなどタレント活動を開始する。YouTube「ダニエル・カールの消防基金チャンネル!」では、防災・防火についても発信中。取材・文/我妻弘崇 矢島泰輔(ダニエル・カールさん)

取材・文/我妻弘崇