大熊容疑者と黒部さんが同居していたマンション

「早く来てください。左胸を刺した」

 同居する会社員・黒部一正さん(45)の胸を刺した自営業・大熊成錦容疑者(33)は、血が飛び散る室内から110番通報した。

 事件が起きたのは、今月10日未明だった。

「深夜でした。寝ていたんですが、騒がしいので目が覚めました」

 そう振り返るのは近隣の豆腐屋の店主。

「窓の外を見ると、救急車やパトカーがずらっと並んでいました。男性が心臓マッサージをされながら担架で運ばれていましたけど、ピクリとも動きませんでした。担架から血が垂れ流れていました。その後から女の人が、警察官に囲まれて連れて行かれましたね。こんなところで殺人なんて、びっくりしましたよ」

 現場は東京・JR神田駅から徒歩数分のマンション。間取りは1Kで、家賃は約9万円。郵便ポストには、大熊容疑者が代表取締役を務める会社名が書かれていた。

「2人はお互いに家庭があり、子どももいます。2年前に知り合って、ここで暮らしていました。いわばW不倫の関係ですね。黒部さんは水道設備会社に勤務していました。大熊容疑者は中国の出身ですが、日本人と結婚し日本国籍を取得しています」

 と民放報道局記者が説明する。さらに動機について、

「黒部さんが友人と旅行に行くと偽って、妻と旅行に行こうとしたことが発覚し、口論になったそうです。大熊容疑者が台所の包丁を振り回していたところ、黒部さんの左胸に刺さったと殺意は否認していますが、包丁は心臓まで達していますからね」

 一部報道によれば、大熊容疑者が働いていた都内の飲食店に、黒部さんが客として通い、出会ったという。お互いに既婚者だったが、家を飛び出して同棲するまでに、2人はのめり込んでいった。

容疑者の名前を出すと……

 近所のコンビニの店員は、

「女性は見たことがないですけど、男性の方は買い物したり、公共料金の支払いをしによく来てましたね。本当に普通の人です」と黒部さんの印象を語った。

 大熊容疑者が代表を務める会社の登記には東京近郊の住所が記載されていた。容疑者の夫が住む場所なのか。

 訪ねると、中年の女性が出てきた。容疑者の名前を出すと、さっと顔色が曇った。

「もう関係ありませんから」

 以前は関係があったということか。

「お話しする義務はありません。子どももいますから、お帰りください」

 そう話しドアを閉めた。

 翌日、再び訪ねると男性が出てきた。30代ぐらいだろうか。容疑者の夫か尋ねると、

「よくわかりません」

 何がよくわからないのか。

「あなたにお話しすることはないということです。余計なことを言うと書かれちゃいますから。とりあえず敷地外へ出ていただけますか」

 そう話し記者を伴って歩くが、何を聞いても、「よくわかりません」と話すばかり。記者を敷地外へ連れ出すと、

「お仕事大変ですね。周辺の方も知らないと思いますよ」と話し自宅へ帰っていった。

 男が死に、女は殺人犯になり、それぞれの配偶者と子どもが残された。W不倫―その身勝手な行為の後始末をさせられるのは家族だ。