神奈川県動物保護センターの犬舎。過去にはたくさんの犬が収容され、処分機へ送られた

全国で5万5998頭が殺処分された

「好きな動物を助けたいと思い獣医師になったのに、なぜ動物を殺しているんだろうって。今まで(犬や猫)100匹以上は手にかけました……」

 苦しい胸の内をそう吐露するのは獣医師だ。自らの手で麻酔薬を打ち処分する様子を、

「注射器のシリンダーの目盛りが減っていくんですけど、手が震えて力が入らなくなったこともありました。閉じた目は2度と開かないんです」

 と振り返る。動物に、こう呼びかけていたという。

「ただ、安らかに眠ってくれ。次に生まれ変わったときは、幸せになってくれと、いつもそれだけを願っていました」

 獣医師の名は、神奈川県保健福祉局生活衛生部の八木一彰さん。獣医師として2005年から'08年まで、県動物保護センターに勤務し、殺処分を担当した。こう続ける。

「仕事なので誰かがやらなければならない。悔しい気持ちだけでは何も変わらない。殺処分される動物を少しでも減らすために変えていかなければと思うようになりました」

 何かを変えれば、殺処分は減らせる。殺処分ゼロも夢ではないという目標を掲げ動物の命を守る取り組みを展開している自治体もある。

 昨年度、全国で殺処分された犬・猫の数は5万5998頭。年々、減少してはいるが、殺処分ゼロの日は遠い。

 愛知県名古屋市の動物愛護センターは昨年度、犬の殺処分ゼロを達成した。1985年の開設以来、初めて。ふるさと納税で集まった寄付金が財源となり活動を支えた。同センター愛護指導係の鳴海大助係長が解説する。

「'13年度は83頭、'14年度は56頭、'15年度は25頭の殺処分をしました。あと少しでゼロにできる。しかし、犬を生かすために税金を使っていいのかという議論もありました。ならば寄付金で行おうと、昨年度から取り組みをはじめました」