安倍政権の4年10か月で何が変わり、暮らしにどう影響して、この先、どこへ向かおうとしているのか。そんな疑問に答えるべく、ここでは安倍政権が行ってきた“シニア向け政策”に注目します。

効率が悪い「訪問介護事業」は縮小傾向

昨年には要介護1、2の生活援助サービスを介護保険の対象からはずす方針も出されていた

 都内在住の木村吉郎さん(50代=仮名)は、認知症の母親(80代)を弟と一緒に自宅で介護している。父親も介護していたが、数年前に亡くなった。

 父親を介護していたのは主に母親だ。当時から軽度の要介護者だったが、母親が介護される側になった。

「1日1回はベッドから車イスに移します。私と弟がいなければ寝たきりの状態です」(吉郎さん、以下同)

 現在、母親は人工肛門をつけているため、排泄調整が難しい。

「接続部分あたりがかゆくなって、母親がはずしてしまい、便をばらまくことがあります。繰り返されると、精神的に破綻します」

 吉郎さんの母親は介護保険で使えるサービス範囲のうち、6割程度を活用している。巡回入浴が週2回。介護ヘルパーは週2回、訪問看護は週1回だ。土日祝日は兄弟2人で介護する。

「効率が悪い訪問リハビリは縮小傾向で、事業として成り立ちにくいようです。訪問していただかないと、リハビリができない要介護者は増えていく。しかし、介護報酬の引き下げで事業所が閉鎖しています」

 事業所の廃止は東京だけでなく、全国的な傾向だ。東京商工リサーチによると、’16年の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は108件。最多だった’15年(76件)の1.4倍増。従業員5人未満が全体の7割、設立5年以内が5割を占めている。うち「訪問介護事業」が最多で48件(前年は29件)。大手でも新規参入の事業者は厳しい状況だ。

 介護従事者約7万2000人で作る労組『UAゼンセン・日本介護クラフトユニオン』(NCCU)の染川朗事務局長はこう話す。

「毎月最低でも1件は事業所が廃止しています。原因は売り上げの不振です。募集してもヘルパーが集まらず、指定基準を満たしません。このままだと介護難民が増えかねない」