女子高生妊婦の蒔田は赤ちゃんを捨てたものの、あえてクリニック前に置いたというところが肝だった。ここでまた清原は思いを馳せる。誰にも相談できず、ひとりで産んでどれだけ苦しかったか、泣きながら自転車に乗って捨てに来たときの思いは、赤ちゃんを助けたい一心だったのではないか、と。

 産むに至った事象だけを見ると、どうしても女性が責められて苦しむ方向に流れてしまう。そこを清原がすくいとる。産む人・産まない人にはそれぞれの事情や理由、背景、感情があるのだ。清原とともに、視聴者は「配慮する想像力」を身につけていくのではないだろうか。

この世に生まれるって案外大変だよ

 清原が看護助手として成長していく物語ではあるが、医療に「絶対」はないという現場の声もきちんと反映されている。

 3話では、虫垂炎の手術後に急変し、脳に深刻なダメージを負った夫をもつ妊婦(田畑智子)の物語が描かれた。医療事故を疑う田畑は常に怒りに満ちている。「許さない」感情、医療不信のエネルギーが不機嫌な妊婦の正体だ。

 清原はその怒りの源を知り、ときほぐすために田畑に寄り添う。出産した田畑は、赤ちゃんを危篤状態の夫に逢わせることができた。怒りは悲しみに、そして子どもを育てていくエネルギーに変わったと信じたい。

「この世に生まれるって案外大変だよ」と清原はつぶやく。

 生まれる命と消える命に真剣に向き合っていく清原の姿に、私はオンナアラートがすーっと引いていく思いがした。


吉田潮(よしだ・うしお)◎コラムニスト 1972年生まれ、千葉県船橋市出身。法政大学法学部政治学科卒業後、編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。医療、健康、下ネタ、テレビ、社会全般など幅広く執筆。テレビ『新・フジテレビ批評』(フジテレビ)のコメンテーターも務める。また、雑誌や新聞など連載を担当し、著書に『幸せな離婚』(生活文化出版)、『TV大人の視聴』(講談社)ほか多数。新刊『産まないことは「逃げ」ですか?』に登場する姉は、イラストレーターの地獄カレー。公式サイト『吉田潮.com』http://yoshida-ushio.com/