菊池真理子さん 撮影/山田智絵

 最近、自身の衝撃的な体験を描くノンフィクションコミックが多く刊行されているが、中でも菊池真理子さんの『酔うと化け物になる父がつらい』は、アルコール依存症の父と新興宗教信者で自殺する母との生活を描いて話題を呼んだ。

私は子どものころ、自分の家がおかしいとか変だとかあまり感じなかったんです。父が酔っ払うのも、母が1日中、泣いているのも深刻に考えていませんでした。

 母が自殺したときは中学生で、さすがに自分の家庭が“普通”からはずれていると気づいたのですが、その現実を見ないように人前では明るく元気なふりをして、仮面をかぶって生活していました

つらい体験を語るには勇気が必要だった

 大人になった菊池さんは、人から優しくされるとどうすればいいかわからなくなったという。

自分への評価が低いから、困ったり疑心暗鬼になったりしてしまいます。だから、優しい人よりも、大酒飲みや私を殴る人と付き合うほうが、私にとっては“わかる”世界で、むしろ居心地がよかったんです。自分の中のハードルが低いんですね。

 というのも、父のことはただの酔っぱらいだと思っていたのですが、ある取材の際、父がアルコール依存症だったんだと知りました。以前は自分が生きづらいのは母のせいだと思っていたんです。しかし、前作を描くことで、父が問題だったんだと気づきました。遅いですよね(笑)。それと、読んだ人から“こんなにひどい親がいるんだ”という反響が多くて、自分もつらかったと言ってもいいんだとわかったんです

 本書『毒親サバイバル』は、菊池さん自身を含む11人が親から受けたひどい仕打ちを告白するノンフィクションコミックだ。

「前作を出したあとで、ほかの人の話を聞いてみないかと出版社からお話をいただき、やってみようと思ったんです」

 それで取材を始めたが、菊池さん以外の10人に登場してもらうまでに、何人にも断られたという。

「おそらく20人以上に断られました。理由はさまざまです。私自身もそうでしたが、“毒親”という言葉に抵抗があるのかもしれません。特に子育て中の女性で取材を受けてくれる方はなかなか見つかりませんでした。

 伊藤洋子さん(仮名)は父から暴力を受けて育ち、ストレスからお酒に溺れるようになりました。ところが、娘が生まれて世界がひっくり返ったと話してくれました。勇気をもってここに登場してくれた10人には、とても感謝しています」