東京電力福島第一原子力発電所が過酷事故を起こしてから7年半が過ぎた。そのうち、安倍政権下が約6年を占める。人々の命と健康を守るには、事故による放射能汚染から遠ざける「避難」、放射性物質を取り除いて集める「除染」が重要だ。さらには汚染土や汚染水など「廃棄物管理」の問題も無視できない。

 国が7月に公表した新たなエネルギー基本計画には、「事故の経験、反省を教訓に肝に銘じて取り組むことが原点であるという姿勢は一貫して変わらない」とある。本当だろうか?

福島第一原発の敷地内に立ち並ぶ、トリチウム水などが入ったタンク(2018年2月、撮影=共同通信社)

 まずは避難への対応から検証していきたい。2017年春、政府は避難指示が出ていた地域のうち、最も放射線量の高い帰還困難区域を除く避難指示解除準備区域・居住制限区域の避難指示を解除した。除染により事故後に比べて放射線量が下がったことを理由にあげている。しかし、山林のほとんどが除染されず、放射線量が局所的に高いホットスポットが点在、事故前の状態に戻ったわけではない。

 また同時期に、いわゆる「自主避難者」への借り上げ住宅の無償供与を打ち切った。定期的な賠償がなく、自力で避難を続けていた人々には唯一の命綱。それが断ち切られ、帰還か、さらなる経済負担かの選択を迫ったのだ。富岡町、大熊町、双葉町、浪江町の全域、葛尾村および飯舘村の帰還困難区域を除く避難指示解除区域でも、来年3月までに応急仮設住宅の提供が打ち切られる。さらに’20年3月には大熊町、双葉町以外の地域で打ち切りが決定ずみ。

 避難者が7年にわたり積み上げた暮らし、帰還への迷いは無視され、施策の打ち切りが一方的に進む。これが安倍首相の発言や政府方針にも頻出し、復興とともに使われるキーワード、「加速化」の姿だ。

 除染の状況はどうか。避難指示のなかった市町村では除染が事実上終了、汚染土壌を中間貯蔵施設へ搬入している。また環境省は、「再生資材」と名付けた汚染土壌の公共事業へ再利用を推進。汚染の低減処理を行うというが、実証実験に選ばれた地域の住民からは「汚染土を拡散しないで」と反対の声が上がっている。

 このような現状に世界の目は厳しい。国連人権理事会の特別報告者は今月、「事故前に許容されていた年間1ミリシーベルト以下が適切」「子どもの被ばくを最小限にする義務が日本政府にある」と指摘。支援の打ち切りが帰還の圧力になるとして、政府方針を問題視している。

 一方で政府は、アベノミクスの成長戦略として下記のとおり原発輸出を進めてきた。原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、原子力規制委員会の規制基準に適合した原発を再稼働させている。

<成長戦略の原発輸出>
ベトナム:日本の受注が決まるも’16年、白紙撤回に
リトアニア:日立の受注が内定したが’12年に国民投票で計画中止
イギリス:日英政府の支援を受けて日立が主導、国民負担のおそれも
アメリカ:東芝の子会社が’17年3月に経営破綻
トルコ:三菱重工業などが受注、事業費5兆円規模の見通し
インド:日印原子力協定の締結で原発輸出が可能に
<相次ぐ 再稼働>
九州電力川内1号機(’15年8月)
九州電力川内2号機(’15年10月)
関西電力高浜3号機(’16年1月)
関西電力高浜4号機(’16年2月)
四国電力伊方3号機(’16年8月)
関西電力大飯3号機(’18年3月)
九州電力玄海3号機(’18年3月)
関西電力大飯4号機(’18年5月)
九州電力玄海4号機(’18年6月)
関西電力高浜1・2号機(’19年秋以降を予定)
関西電力美浜3号機(’19年秋以降を予定)

 再稼働へ向けた手続きの一環として、原発立地自治体と周辺市町村は、住民の避難計画を策定することになっている。国の原子力規制委員会は先月、事故発生時の避難などに伴う被ばく線量を「初期の1週間で100ミリシーベルト以内を目指す」とする目安を賛成多数で決めた。

 しかし現行法令では、一般人の被ばく線量限度は国連人権理事会も指摘した「年間1ミリシーベルト」。事故の際には立地自治体はおろか、その周辺住民にもリスクが押し付けられることになる。