遺言・相続なんでもQ&A
Q. 長男の嫁として、亡き夫の母を介護してきました。義母の遺産をもらうことはできる?
A. 今までは遺言がないともらえなかったけど……
民法で法定相続人が決められています。それ以外の嫁やいとこ、友人などが財産を受け取るには、従来は遺言でその旨を指定してもらうことが必要でした。しかし昨年からは、無償で介護をして尽くしてきた嫁などは、遺産を相続した人に対してお金(特別寄与料)を請求することができるようになっています。ただし、もらえる金額の目安は、まだできたばかりの制度なので未確定。今後の裁判の積み重ねなどで決まります。確実に財産をもらいたいなら、遺言書を書いてもらいましょう。
Q. 「紀州のドン・ファン」の妻は、遺産をもらえるの?
A. 田辺市と半分ずつ分け合うことになるでしょう。
総額13億円もの財産を残して亡くなった「紀州のドン・ファン」。法定相続人は結婚して数か月の妻と、故人のきょうだい。しかし、遺言書には、全財産を「田辺市に寄付する」との言葉が……。そのような内容であっても、正式なものなら故人の遺言は執行されます。ただし、遺言があっても妻には「遺留分」を受け取る権利があります。今回の場合、もらえる割合はなんと1/2。一方、きょうだいには残念ながら遺留分はありません。
Q. 遺言書を書くのが面倒。動画で残してもいい?
A. 気持ちはわかりますが、法的には無効です。
個人的には、本人の意識がしっかりしている様子もわかるし、紙の遺言書よりもいい証拠になるから認めてもいいのでは……と思っています。でも、残念ながら現状では法的には無効です。動画を見て、遺族が遺産分割の話し合いで「このとおりにしよう」と従ってくれればそれでいいのですが、反対する人がいて裁判になれば、法定相続分に従って分け合うことになる可能性が大です。遺言は紙に残しましょう。
Q. 遺言書で財産を相続してほしい人の名前を書き間違えたら、無効になっちゃう?
A. 誰のことかわかれば大丈夫だけど気をつけて!
自筆証書遺言は日付や署名捺印がないと無効! ならば、書き間違いがあったらまずいのでは……と思っちゃいますよね。でも、国としても故人の遺志は尊重したいので、ちょっと誤字があったくらいで「即、無効!」なんてことにはなりません。書かれた名前が誰を指しているのか合理的に判断できれば、遺言はきちんと実行されます。ただし、親族の中に似た名前の人物が複数いる場合はもめる原因に。気をつけるに越したことはありません!
《取材・文/鷺島鈴香》