上下関係について厳しくしつけられた世代にとって、大御所は怖くもありながら、同時に「ご一緒させていただけてうれしい」というある種のステイタスや高揚感をもたらしてくれる存在でした。しかし、若い世代にとっては「大御所」は「単なる先輩」なのではないかと思うのです。ですから、大御所との共演で萎縮することもなく、堂々としているのでしょう。

テレビにこだわる必要がない理由

 話をフワちゃんに戻しましょう。フワちゃんは『マツコ会議』で「私が選ぶというスタンスでやりたい」と仕事の方針を説明していました。「自分が選ぶ」というのは若い世代に共通する感覚でしょうが、オファーがあって初めて成立する仕事で「自分が選ぶ」立場に行くのは、それなりの業績を積み上げる必要がありますから、時間がかかります。

 しかも、テレビの世界は、ビートたけしや明石家さんまなど60代・70代がいまだ現役ですから、最近現れたフワちゃんが実績を積むには相当時間がかかることを覚悟しなければなりません。「憧れの人たちとご一緒できている」と思えれば我慢をするかもしれませんが、「大御所は単なる先輩」と考えた場合、「YouTubeもあるし、何もテレビにこだわる必要はない」という結論にたどりつくのではないでしょうか。

 その昔、芸能人の成功はレギュラー番組の本数で量られたものでした。しかし、今、テレビがメディアの王様ではなくなってきていて、特に若い世代はYouTubeよりテレビのほうが上というような序列意識も薄れているような気がします。「芸能人として成功すること=テレビにたくさん出ること」という、テレビ中心主義がすでにヤバくなっていることを、フワちゃんに教えられた気がしたのでした。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に応えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。好きな言葉は「勝てば官軍、負ければ賊軍」