東京都に住んでいるA子さん(30代)は、友人女性とルームシェアをしながら、飲食店のアルバイトとして働いていた。しかし新型コロナの波が押し寄せ、収入が激減。カラオケ店で働いていた友人も同じように収入が減ってしまい、家賃が払えなくなってしまった。

「コロナ禍でお金がなくなって家賃を1か月滞納しています。実家を頼ることはできず、住むところを追い出されるのではという恐怖から支援団体に相談するまでに」

 大学卒業後、就職のために上京し、正社員として勤務していたが、大学時代から発症していた鬱病が悪化してしまって離職したという。その後は非正規で働いていたが、その綱渡りの生活を新型コロナが直撃した。

 しかし、このケースはまだましだ。

 女性貧困に多く見られるのが、危険な関係性に絡めとられてしまい抜け出せないというケース。代表的なのはDVや虐待である。性暴力を含む被害が生活状況に色濃く出て、その結果が「家なきオンナ」に直結してしまうという例だ。なかには、性被害による望まない妊娠や出産によって、さらに生活が困窮してしまう女性も。そのような性的被害による貧困問題も、女性特有といえるだろう。

 20代のB代さんは実際にこのような被害に遭った女性のひとり。以前からパートナー男性からのDVに悩んでいたが、コロナ禍の影響でストレスがたまった男性のDV傾向はさらに悪化。その後、B代さんの妊娠が判明すると相手の男は逃げ出してしまったという。

「子どもは産みたい。シングルマザーとして生活していくつもりでした」。しかし、妊娠中に働くのは身体に大きな負担がかかる。現在の派遣の仕事は月収10万円ほどにしかならないし、子どもが生まれてもひとりで子育てするとなると現実はさらに厳しい。実家の母親は祖父母の介護と仕事で手いっぱい、弟は新卒1年目で頼れるはずもない。

 いますぐにでも「家なきオンナ」になってもおかしくない状態で、将来は八方塞がりだという。

路上生活を避け、ネットカフェを転々

 2020年に起こった「渋谷女性ホームレス殺害事件」。路上生活者の60代女性がバス停のベンチで休憩しているところを、早朝たまたま通りかかった当時46歳の男に撲殺され、世の中を震撼させた。体力的にも男性にかなわない女性には、路上生活は危険。女性の路上生活者が男性よりも圧倒的に少ないのは、これが大きな要因である。

 家を失った女性たちは、ネットカフェや知人の家を転々としたりなどして、どうにかその日の宿を探す。最近では、頼れる人がいなくなるとTwitterや掲示板などのSNSで家に泊めてくれる人を探すケースも増えている。応じてくれる相手の顔も名前も知らず、素性がわからない場合もある。

 その結果たとえ犯罪に巻き込まれる危険性があろうと、彼女たちにとっては「路上よりはマシ」なのだ。経済的にも身体的にも弱者でしかない女性は、できるだけ世間から隠れるように、貧困にあえいでいる。

「誰かの家ではなく、どこかの場所ではなく、トイレとキッチンのある自分の居場所を手に入れたい」

 と首をうなだれた女性の目に、光はなかった。

※本文中の事例は認定NPO法人自立生活サポートセンターもやいの相談記録に基づくものであり、複数の事例を混ぜ合わせたり、一部を改変し匿名化処理を施してある

取材・文/オフィス三銃士