手渡された紙幣の感触もあったのに

 小関さんが静かに語り始める。

「真夜中の1時過ぎ、神奈川県・JR横浜線沿線にある駅でタクシーを止めていると、女性が乗ってきたそうです。全身、真っ白な服を着ていて、前髪が鼻近くまで垂れている……いわゆる貞子のような髪型をしていました」(小関さん)

 運転手が行き先を聞くと、その女性は横浜市内にある某斎場を指定した。

「その斎場の周辺に住宅地はないですし、斎場は閉まっている時間でした。しかし、タクシー運転手である以上、指定された場所にお客様を運ばなければいけません。アクセルを踏み込み、斎場へ向かったそうです」

 道中、一切の会話もなく、目的地へと走り続けた。20分ほどかけて斎場の前に停車すると、白い服の女性は何も言わず、運賃2800円を支払うために、3000円を差し出したという。

「200円を用意するため、10秒ほど目を離しました。そして、おつりを渡そうと後ろを振り返ると、すでに女性はいなくなっていました。この斎場は、一本道の途中にありますから、仮に女性がおつりをもらわずに降りたとしても、前後を確認すれば必ず視界に入るはずです。目を離したといっても、短い時間。ですが、その姿をとらえることはできなかったそうです」(小関さん)

 帰庫した運転手は、違和感を覚えながらも、その日の集計をするために机に向かった。ところが……。

「2800円分だけ合わなかったそうです」(小関さん)

 何度計算しても、白い女性を乗せた運賃分だけ合わない。つまり、実際には誰も乗せていないのに、運転手はメーターを回し、2800円分を走行させたということになる。手渡された3000円を含む、その数十分間、運転手は何を見ていたのか。

 もし、あなたが「賃走」状態であるにもかかわらず、誰も乗せていないタクシーを見たら、運転手は異世界の住人を乗せているのかもしれない。

 この話を隣で聞いていた、前出・竹内さんは「私も昨年、そこを案内したときに、総毛立った」と明かす。

「ツアーのお客様が降車すると、突然、“見られている”と言うんです。その瞬間、今まで体験したことのないような寒気を感じ、ゾワゾワッと全身の毛穴が開くような感覚が」(竹内さん)

 霊感がないと話す竹内さんですら、恐怖を感じるスポットを実際に巡礼ツアーで訪れるというから、三和交通のチャレンジ精神もある意味では恐ろしい……。

「もちろん、ツアー開始前には担当乗務社員はお祓いをするなど対策を講じています」と

 小関さんが説明するように、安全・安心のツアーを心がけていることも付記しておこう。