接骨院の数が増えすぎたのも一因

 接骨院や整骨院はもともと、近くに整形外科がない人が骨折や脱臼したときに応急処置を施してもらうための場所だった。

 そのため以前は「骨つぎ」とも呼ばれていたが、いまは整形外科医も増え、ほとんどの人が家の近くで整形外科にかかることができる環境になった。

「にもかかわらず、接骨院などで働く柔道整復師の数は増え続け、いまや整形外科医の約3倍います。接骨院の数も増えたので当然、過当競争になり、業務範囲外の、本来なら医師の範疇の施術を行っていることも健康被害が増えた一因だと思います」

 例えば、長く続く腰痛や首の痛みなどは、本来は医療機関に行くよう患者を促すべきなのだが、自分のところで施術している場合も多いという。

 また、接骨院に行く人が高齢化していることも関係している。骨粗鬆症などで骨がもろくなっていれば、当然、マッサージなどで骨折しやすくなるからだ。

 ただ、これだけ健康被害が出ていれば、接骨院側も強い指圧を避けるなど、注意をするのではないだろうか。

「実はいちばん問題なのは、自分たちがそういった被害を出している事実に気がついていない可能性が高いことです」

 患者は接骨院でケガをしても、お世話になった手前、あまり表沙汰にしたくないと思う人が多いのだという。同じところにまた行くことはさすがにないが、わざわざ「ケガをした」と言いに行く人も少ないのだ。

「それでは接骨院側が気がつくわけはありませんし、場合によっては、その患者さんが来なくなったのはマッサージで痛みが取れてよくなったからだと勘違いする場合もあるから、厄介なのです」