捜査関係者によれば、猿之助は任意聴取中に“歌舞伎界に戻るつもりはない”と漏らすなど芸能界への未練を断ち切ったと語られているが、彼が率いていた歌舞伎一門・澤瀉屋は途方に暮れている。

“リトル猿之助”と呼ばれた歌舞伎役者

「澤瀉屋のトップは市川猿翁さんですが、近年は体調が優れず、実質的には猿之助さんが一門のリーダーでした。彼は役者としてだけでなく、舞台の演出や企画なども手がけて澤瀉屋を引っ張ってきたのに、今回の逮捕ですからね。今後は澤瀉屋の公演や、所属俳優の待遇面にも影響を及ぼすでしょう」(松竹関係者、以下同)

 澤瀉屋には猿之助のいとこで、高い演技力で知られる香川照之と、その息子で将来は『猿之助』の名跡を継ぐとされる市川團子がいるが……。

「香川さんは歌舞伎歴が約10年と経験不足。團子さんは猿之助さんの代役を務めて注目されていますが、まだ10代とリーダーを務めるには若すぎます。猿之助さんの穴を埋めるだけの役者は、今の澤瀉屋にはいないんです」

 この窮状に澤瀉屋内で、ある人物の復帰が待ち望まれている。一時は『猿之助』を継ぐといわれた市川右團次だ。

「大阪の日本舞踏の家に生まれた右團次さんは、11歳のときに猿翁さんが直々にスカウト。中学進学と同時に単身上京し、歌舞伎役者・市川右近として猿翁さんの元で稽古に励むと徐々に頭角を現し、20代半ばで“リトル猿之助”と称されるほどになりました」

 猿翁の芸を吸収し、舞台の主役を張れるほどの役者になった右團次は、いつからか『猿之助』を継ぐといわれるようになった。'10年に掲載された雑誌のインタビューでは右團次自身も、血縁に縛られず実力ある役者を起用する猿翁に出会えて幸運だったと語るなど、『猿之助』の継承を見越したような発言もしていた。が、'11年に開かれた澤瀉屋の襲名披露会見では……。