“メタ読み”は、カタカナと漢字、そして平仮名から構成される言葉だ。日本語特有の文字の種類の豊富さも、「表現としてしっくりくるかどうかを大きく左右する」とは、前出のゼミ生だ。
残った言葉と残れなかった言葉の違いを探る
「生命力が弱い生き物のことを、私たちは“よわよわいのち”と表記するのですが、“弱弱命”だったら、私たちがイメージする生命力が弱い生き物にならない(笑)。カタカナ、漢字、平仮名にこだわれることもオタク用語の面白いところだと思います」(ゼミ生)
それにしても、これだけ言葉が増えれば、廃れていく言葉もあるに違いない。小出先生は、この点も研究対象にしていきたいと話す。
「ゼミ生とともにこれだけの言葉を集めることができたので、継続的にオタク用語を研究していきたいです。新たに変化する言葉もあれば、使われなくなる言葉もあるはず。残った言葉と残れなかった言葉の違いを探ると、また新しい発見があると思っています」
現代のオタク用語とは、内省化した言葉が咲き乱れているといっていいかもしれない。自分の感覚や感情を、しゃく子定規な言葉に当てはめずに表現できることは、うらやましいこと。好きなアイドルのグッズを開けることは、まるで宝庫の扉の封印を解くように尊いのだ。
知っておきたい現代『オタク用語』
お顔が天才 【意味】
顔以外も良いことは言うまでもないが、顔の造形が本当に素晴らしく、唯一無二である様子。あまりにも尊く「顔」という表現では不敬に当たるため、「お顔」という表現を用いる。【用例】「今日もまた、推しのお顔が天才なのよ……」
死ぬ 【意味】
素晴らしさにショックを受けたり、最高だと表現したくなったりした際に使われる言葉。【用例】「今回のイベント、良すぎて死ぬ(死んだ)」
助かる 【意味】
推しから供給をいただいたことに対して返す感謝の言葉。また、供給に耐えられず、救済を求めるさまを「助けて」という。【用例】「くしゃみ助かる(くしゃみをしているかわいい様子を供給していただき、ありがとうございます)」
草 【意味】
笑えるほど滑稽で面白いこと。「草生える」で笑っていることを意味する。「w」が笑っていることを表し、それが草が生えているように見えることから。【用例】「このマンガ、めちゃくちゃ草生えるんだけど」
バブい 【意味】
成人男性であるにもかかわらず、赤ちゃんのような素直な様子を見せていること。純真無垢な様子。【用例】「推しがお口いっぱいにハンバーガーを頬張ってニコニコしながらもぐもぐしているところ、バブくて死ぬ」
取材・文/我妻弘崇