現在も娘はひそかにホストクラブへ通い続けている。
悪質なホストクラブによる被害者やその家族を支援する「青少年を守る父母の連絡協議会」代表の玄秀盛氏は、
「今のホストクラブは、本来の接客業から逸脱し、女性のことを金としか思っていない。この子なら数千万円は稼げるなと、商品として見ている」
判断能力が乏しい若い子がターゲットに
と語る。7月に立ち上げた同団体には、毎日20件ほどの相談が寄せられる。
「娘がカラダを売るのを止めるために、売掛金計3000万円を肩代わりしたご両親もいました。しかし、お金も尽きて、最終的に娘さんはカラダを売り、残りの900万円を支払った……。ご両親は“私たちが払ったお金は何だったんでしょう”と。ホストに洗脳された娘さんは、今も風俗で働いてお金を払い続けています」(玄氏、以下同)
どうしてここまでの状況に陥ってしまうのか。
「初回は数千円と謳って、来店した客に甘い言葉を囁く。いい気分にさせ、再来店させる中で異性経験の少ない子と肉体関係を結び、洗脳していく。女性は、いつかそのホストと結婚できると信じ込むようになる。そのための“洗脳マニュアル”も存在します」
父母から寄せられた相談メールには《娘はホストと一緒にいつか店を出すと話している》などと書かれていた。
こうして女性たちは、ホストに紹介された風俗店で働いたり、立ちんぼをしたりして金を稼ぐようになる。
警視庁が'23年1月から12月19日までの間、歌舞伎町の周辺で売春防止法の疑いで逮捕した女性は140人。うち約4割がホストクラブで遊ぶ金を稼ぐためだった。こうした被害が増加した背景には、何があるのか。
「ホストがタレントとしてテレビ出演することで、ホストクラブに通う心理的ハードルが大きく下がった。これに加え、地方から上京した子がコロナ禍で孤立する中、SNSを通じてホストから連絡がくる。
寂しさを埋めるために遊びに行って深みにハマるというワケです。高額な売掛金も以前は“未成年者取消権”で帳消しにできたが、成人年齢が18歳に引き下げられ、判断能力が乏しい若い子がターゲットとなり被害が増加した」
ホストに人生を壊されてしまった人も少なくない。
「何百人もの男に抱かれ、性病に感染したり、何度も中絶をしたりする子もいる。そして、少しずつ精神が破壊されていくんです。何千万円も貢いだ末にホストに捨てられ、精神が崩壊してしまった子にも会ったことがあります。人生が壊され、回復できない被害者が大勢いるんです」
前出の母親も、不安が募る。
「悪い方向に進んでいかないか心配です。いつか娘に元の笑顔が戻るんじゃないかと、わずかな望みを持ってはいますが……」
1日も早く目が覚めることを願う─。
玄秀盛 1956年、大阪市西成区生まれ。ドメスティック・バイオレンスや虐待、多重債務などさまざまな相談に乗る公益財団法人「日本駆け込み寺」の創設者。2023年7月には、「青少年を守る父母の連絡協議会」を立ち上げ、ホスト被害者支援に取り組む