ちなみに、フジテレビは当時、タモリ以外にも司会のオファーをしていたことを、そのひとりだったビートたけしが『いいとも』で明かしている。

「俺がやっていたら、3年で終わってたな」

 と笑いにしていたが、タモリは31年半もやったのだから、ものすごく頑張ったのかもしれない。

お笑いビッグ3の残る2人

 ただ、基本的には自分の美意識に反することはしたくない人だ。『いいとも』で好感度を獲得したあと、共演者がどんどん若くなっていくにつれ、彼はおじいちゃんキャラにシフトしていく。これは若作りのみっともなさを避けたかったのだろう。

 なにせ、幼稚園のお遊戯を拒否したくらいだから、老成のキャリアが長い。それゆえ、世間に愛される年寄り像をうまく体現できたのである。

 そんななか『ブラタモリ』は唯一、若い女子アナにウンチクを垂れる姿が楽しそうで、わりと我欲が出ていたように思う。そこで鍛えられ、成長していった女子アナも多いわけだが、なかには鼻につく人もいたらしい。

 とはいえ、彼はもともと鼻につく感じで世に出た芸人。『ブラタモリ』もなくなると、無難な晩年すぎるというか、もはやつまらないともいえる。

 老害とは、成功した年寄りに許されるご褒美のようなものなのだ。どうせ、今の若者はテレビを見ない。お笑いビッグ3の残る2人、ビートたけしや明石家さんまにはもっと暴れてほしいものである。

宝泉薫(ほうせん・かおる)アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)