“欲”を抑えて心を育てればお金は増える

 しかし、なぜ収入の半分も“自己投資”が必要なのか。景気の悪い昨今、生活していくのに精いっぱいで、多くの人は貯金はおろか自己投資にお金をかけられない気が……。

「そうでしょうか。食べたいものも食べられない、買いたいものも買えない。そんな生活を送っているでしょうか?

 経済発展を遂げた現在の日本では、日々の暮らしに困るほど貧しい家庭はあまり見られなくなりました。にもかかわらず、生活苦を感じて貯金もできない世帯が後を絶ちません。それはお金の使い方に問題があり、そこには『欲』が影響しているのです」

 欲は仏教用語でいう煩悩のひとつだ。

「煩悩のうち、人をもっとも毒するのが『三毒』と呼ばれる『貪・瞋・痴』です。貪は欲望や執着、瞋は怒りや憎しみ、痴は無知や誤解を指しますが、この状態に陥ってしまったら消費行動に拍車がかかりやすくなり、財産を失うとされます」

 例えば、仕事や家庭でイライラやストレスが募ったとき、買い物などをして嫌な気持ちを発散したくなるもの。

「手っ取り早く『快』を得られるのが消費です。その人にとって、高額であるほど満足感とともに大きな快を得られます。ですが日々の不快を消し去るために散財していたら、お金は貯まりませんね」

 消費そのものが悪というわけではない。問題は、十分満たされていながら、「もっと、もっと」と欲しがることにある。

「仏教の世界では、私たちが必要以上のものを激しく求める、欲を欲するとき、その行いをいさめます。その対処法として、『心』のあり方が大切なのです」