真の資産家はブランドバッグよりもビニール袋

「足るを知る」という言葉がある。欲張らず現状の物事に満足すること。その状況に感謝し、受け入れることで心が豊かになる例えでもある。

「仏教にも“まだ得られていないものを欲せず、すでに得られているもので満足する。そうすれば心穏やかに生きられる”といった教えがあります。欲が多すぎると苦しみや煩悩に陥りやすくなり、結果的に財を失うことになりかねません」

 しかし、人は収入が増えれば増えるほど、いい家に住み、いい車に乗り、ブランドバッグを持ちたがるもの。

「ところが、真のお金持ちほど暮らしぶりは地味で堅実なのです。勤勉に働き、決して派手な生活は送っていません。他人をうらやんだり、比較することもない。自分なりのスタイルを守り、ルールに従って長い目で見てしっかりと資産を築いています」

 大愚和尚の知る資産家のひとりは意外にも地元の小さな花屋さんだという。

「朝早くから夜遅くまで働き、堅実に商売を守られています。生活や見た目に派手さが一切ないため、誰も資産家とは気づきません。高級ブランド品のバッグではなくビニール袋を持って歩いておられますよ。心穏やかに気負わない日々を送られていることが感じられます」

 さらに、真のお金持ちは仏教の教えで重要とされる「慈悲心」を備えているとも。

「慈悲心とは相手をいたわり、苦しみや悲しみを取り除き、喜びを与えることです。それは、お金の使い方にも表れるんです。

 自分だけでなく、人のためにお金を使うことを惜しまない。お金がなければ知識や経験を惜しみなく提供する。

 そうすれば、相手は与えられた喜びを返したくなりますよね。結果、お金や人が複利で集まり、人生も資産も豊かになっていきます」

 冒頭で紹介した収入の半分の自己投資は、こうしたお金の使い方を理想とする。実際、それを体現する生き方をした人物がいるという。

「『日本の公園の父』であり、“蓄財の神様”と称される本多静六氏です」

 本多氏は貧乏な農家に生まれながらも東大教授にまで上りつめた。そして、造園家として明治神宮の森や日比谷公園など日本を代表する公園の設計を手がけている。

「徹底した倹約生活のもと、お釈迦様が唱えた『収入の4分の1貯蓄』を実践。少し貯まったら投資を行い、また造園事業を通じて社会に貢献し、現在の価値で約100億円の資産を築きました。そして晩年、ほぼ全財産を寄付して人生を終えるのです。同氏の著書をぜひ、読んでほしいですね」