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ー がんをきっかけに家族関係は濃密に

 昨年末にステージ4のすい臓がんを公表した経済アナリストの森永卓郎氏(その後、「原発不明がん」と診断)。一時は「このまま死ぬと思った」というほどの不調に陥るも、今は闘病生活を送りながら、ラジオ番組や大学ゼミといった仕事にも精力的に取り組んでいる。

 現在の治療状況や家族との日々をはじめ、ベストセラーとなっている新刊『書いてはいけない』に関するエピソードなど、知られざる思いを明かしてくれた。

がんをきっかけに家族関係は濃密に

「現在4週間に一度の『オプジーボ(がん免疫療法薬)』の投与と、2週間に一度の血液免疫療法を行っています。治療開始から1か月ほど経過した今年3月5日に造影CTを撮りましたが、がんは大きくも小さくもなっていないという判定でした。

 見方によっては、ほんの少しだけガンの浸潤が小さくなっている可能性もあります。いずれにしても、免疫細胞軍団とがん細胞軍団の戦力が拮抗している状態で、予断を許さない状況です」

 森永氏はがん治療の進捗をこう説明する。昨年末にがん宣告を受けた際、医師から「桜は見られないだろう」と告げられていたが、無事その時期を乗り越え、人生初という家族での花見が実現したそうだ。

「4月7日に子どもたちも集まって花見を楽しみました。これまで家族との交流がほとんどなかったので、がんをきっかけに関係は濃密になりましたね。ただ、まだ治ったわけではないのですから、いつ死んでも悔いのないようにやるべきことをやっておくというのが、いまの心境です」

 家族と一緒に過ごす時間が長くなり、とくに奥様は闘病中の森永氏を献身的にサポート。その日々を振り返り、森永氏は感謝の言葉を述べる。

「結婚してからずっと働き続けて家に帰れないことが多かったため、妻と過ごす時間はほとんどありませんでした。41年たち、この4か月余りで妻と過ごした時間は、それまでの40年間すべてを合わせた時間と同じくらいになりました。

 いまは要介護3の状態にあり、一人では着替えもできないので、妻は『介護士』として懸命に支えてくれています。この人と結婚して本当によかったと思います。その一方で、食べ物や着るものの嗜好など、ありとあらゆるところで、妻と違うことも明らかになってきました。ただ、いまは妻が随分と譲歩してくれています(笑)」