百田尚樹の原作は、累計発行部数546万部を突破。同名映画のヒットも記憶に新しい。そんな『永遠の0』が3夜にわたるスペシャルドラマとして放送される。主演は向井理。クールに思われがちなこの男が抱え持つ“本音”に迫る。

青臭い「気負い」がすごく気持ちいい

向井理 『永遠の0』
撮影/伊藤和幸
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 撮影終盤の食事は水と塩だけ。体重は8㎏減り、幻影を見るまでに至った。心身をすり減らしながら作り上げた本作だけに、やはり自信が?

「僕は普段、そう思うタイプではなく、“どう思われるかな?”と不安に思うほう。でも、今回はいいものができたと思っています。正直、撮影中から思っていました」

 こんなにも自信を持ち、こんなことを言う自分も珍しいと笑う。

「戦争ものって、誰しも気負うんですね。僕もそうですし、ほかの役者さんたちも。特に第1夜だと、満島真之介くんの気負いはすごく気持ちよかった。いい意味での青臭さがすごく映えるので。キャリアに関係なく、現場に持ってきた熱量でどんどん飛び越えていく。それを僕が受け、返していく。お互いに感化されながらやっていましたね」

 中尾明慶、賀来賢人、工藤阿須加、尾上松也……誰しもが熱い思いを持って撮影に臨んでいることを、芝居しながら痛感したという。

「負けてられないな、と思いました。軽い作品ではないので、何年かに1度しかできないですけど、でも、その何年分かのパワーを全部つぎ込んでやってやろう、と。そして、撮影当時にできる限りの全力を尽くしたという自負心はありますね」

 並々ならぬ思いを寄せる本作だけに、新たな代表作になることを願っているのかと思いきや、

「気にしたことがないですね。それは、自分ではなく、周りの人が決めるものですから。僕はこの作品だけで終わるわけではないので、今後はこの熱量を超えていくものを残さないといけない。そういう意味では、すごく高いハードルのものを作ったな、という後悔はあります。これを超えていかないと“落ちたね”と言われますから」

 冷静でありながらも、この男が胸の内にたぎらせている熱量は計り知れない。

後輩に伝えた思い

 向井にとって戦争ものは4作目。特攻隊員の役作り(’07年公開『俺は、君のためにこそ死ににいく』)で自衛隊に体験入隊もしている。

「あのときは本当に必死でした。その蓄積があるから、今回は所作の指導を受けずにできました。また、今回は戦争ものが初めてという若い役者さんもたくさんいたので、自分の経験を伝えることも、ひとつの役目だったのかなと思っています。次回また戦争ものに出演するときに〝そういえば、こんなふうに言われたな〟と、少しでも思い出してもらえたら。みんなの経験になればと思いました」