狸が化け、天狗と人間を巻き込んだ壮大な物語

もりみ・とみひこ●作家。1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院修士課程修了。大学在学中の2003年に『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。著書に『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『恋文の技術』『宵山万華鏡』『ペンギン・ハイウェイ』『四畳半王国見聞録』『聖なる怠け者の冒険』など。(撮影/近藤陽介)
もりみ・とみひこ●作家。1979年、奈良県生まれ。京都大学農学部卒、同大学院修士課程修了。大学在学中の2003年に『太陽の塔』で第15回日本ファンタジーノベル大賞を受賞し作家デビュー。著書に『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『恋文の技術』『宵山万華鏡』『ペンギン・ハイウェイ』『四畳半王国見聞録』『聖なる怠け者の冒険』など。(撮影/近藤陽介)

 舞台は京都。そこには狸と天狗と人間が住み、お互いに化かし合い、すったもんだを繰り広げている……。そんな世界を描く『有頂天家族』シリーズの第二部が、前作の刊行から7年半の時を超えて完成!

「紆余曲折がありまして……。あんまり続きが出ないもんだから、第一部だけで終わってるんだと思ってる人や、これはもう無理なんだろうと諦めの境地の方も結構いらっしゃったんじゃないかと思うんですけど」と笑う森見さんですが、第一部からの読者から、アニメや舞台を楽しんだ方まで、みんな待ち望んでおりました!

 森見さんが学生時代に住んでいた京都の住宅地で狸を目撃したことからアイデアを得たこと、そして小説家としてデビューしたころから「お話がグイグイ進んでいって、大がかりなクライマックスがやってきて、泣かせる人情話的なものも入っている、そういう王道の物語をいっぺん書いてみないといかんな」という思いから書かれたという『有頂天家族』。

 第二部は、前作でチラッと触れられていた、天狗の後継者である二代目が百年ぶりに英国から日本へ帰国するところから始まります。

 狸の名門であり、下鴨神社の糺の森に住む下鴨家。その四兄弟の三男・矢三郎は、家訓である“面白きことはよきことなり”を実践し、天狗や人間を巻き込む騒動を引き起こしたりして楽しく暮らす若い狸。

 その師である隠居の天狗・赤玉先生、先生から愛情と薫陶を受ける美しい女性・弁天、下鴨家の仇敵である夷川家、偉大なる下鴨家の父を狸鍋にして食べた人間の集まり「金曜倶楽部」、鞍馬山に住む天狗など、第一部の登場人物に加え新キャラが多数登場します。

 そこに、愛した女性をめぐって赤玉先生と壮絶な闘いを繰り広げた二代目の思惑や、あちこちで勃発する不穏な動き、さらには狸の恋の行方なども絡まって、登場人物は右往左往、京都の街はてんやわんや、前作を上回る大騒動が勃発します!

 しかし、続編執筆には相当な苦闘があったそうです。

「こういうふうなお話にしなきゃいけない、って前もって決めつけてしまって、書き始めて行き詰まるというのが何回かあって……。ちょっと考えすぎてしまったんですね。比較的無難な展開を選ぼうとへっぴり腰になってる自分を押しのけて、とりあえずもうやってまえ、多少の矛盾とかには目をつぶるから、もう最後はグッチャグチャにしてやれ! ということになかなかゴーサインを出せなかったんです。

 でも無茶苦茶な方向へ持っていかないと、第一部みたいなエネルギーは出ないし、前作を超えられない。それをなんとか出すっていうのが難しかったですね。ただ第一部で広げた風呂敷を、第二部で引き継ぎつつ、結局もっと広げてもうた、という感じで。第二部がこんな壮大なスケールになってしまったんで、第三部を書き終えた時には燃え尽きてるんじゃないか、と今から心配です(笑い)」

※次ページは「事実は小説よりも奇? 森見さんも化かされた!?」