20160531_tsukiji_3
正午を回れば片づけが終わる仲卸

 1935年に開場した築地市場が80年以上にわたって多くの胃袋を満たしてきた役目に幕を下ろそうとしている。東京都中央区から江東区の豊洲新市場に移転するまであと半年となったが、なぜ“世界一の台所”と称される築地市場が移転しなければならないのか。

 都市計画に詳しい早稲田大学社会科学部の佐藤洋一教授にその理由を聞いた。

「物流の点から言うと現在の築地市場は時代にマッチしていないんです。開場した当初は鉄道輸送がメイン。市場の最奥には鉄道を引き入れるための引き込み線が引かれ、それに伴って扇形の市場が形成されました。かつて鉄道で運ばれてきた商品は扇形の外から内へと流れる非常に理にかなった構造をしていたのです」

 全盛期には1日に150両の貨物列車が出入りしていたが、やがてトラック輸送の割合が増え、'87年を最後に列車運行は終了。

「現在、トラックの発着所は内側にあり、産地から届いた商品を仲卸が市場内の店舗に運び、またそれを取引先に輸送するために発着所に戻すという2度手間を強いられる構造になっています」(佐藤教授)

 結果、手狭な土地でトラックや荷物運搬用の小型車“ターレ”が激しく行き交う混沌とした状況に。買出人や観光客との接触事故もたびたび起きていた。加えて、建物の老朽化で商品の品質や鮮度保持が難しくなってきた事情もある。抜本的な改善が急務なのだ。

 それでもいまだ、移転反対を唱える市場関係者もいるという。約2年間、築地市場長を務めた森本博行氏は、その背景をこう説明する。

「築地市場移転の構想が出たのは、開場から40年たった'75年ごろから。老朽化に伴う改築の話が出始め、何度も失敗してきました。やはり築地という便利な場所からわざわざ移転したがらない。築地は飲食店の多い銀座に近く、複数の地下鉄路線を利用できる。

 それに比べ、豊洲へは現状、モノレールの『ゆりかもめ』を使うしかない。早朝4時には活気づく市場に始発列車が間に合わない。今まで自転車やバイクで買い出しに来ていた人も多く、通勤コストも上がるうえ、アクセスの悪さは商売に大きな影響を与えます。これに、都はいまだに明快な打開策を打ち出せずにいるのです」