なんてゴージャスなドキュメンタリー!? ファッションをテーマにしたドキュメンタリーは数あれど、『メットガラ』は想像の斜め上を超える豪華すぎる内容。ドキュメンタリーは、私たちが日ごろ入れないところに潜入して間近で追体験させてくれることが面白さのひとつではあるけれど、『メットガラ』は世界の、ほんの一部の人しか体験できない場所へと誘ってくれる。

『メットガラ』とは、NYメトロポリタン美術館(MET)服飾部門の、1年間の活動資金を集めるために開かれるファッションの祭典(ガラ)のこと。全体を仕切るのは、あの『プラダを着た悪魔』のモデルとなった雑誌『VOGUE』の辣腕編集長アナ・ウィンター。

 彼女の影響力がいかに大きいかは、数時間のイベントの1人当たり25000ドルの600席が一瞬にして完売するというすさまじさでわかるというもの。さらっと書きましたが、これ約18億円。ここ数年で集めた金額約135億円ですから!!

 いちいちケタ違いなので概略を並べるだけで「そそられる」が、その中身は、2015年にMETで開催された「鏡の中の中国」展の準備からオープニングまでを追いかけてゆきます。

 アナ・ウィンターとともに姿を追うのは、MET服飾部門を指揮するアンドリュー・ボルトン。これは幾重にもひだのようにのしかかる壮絶な重圧を、彼がいかに並々ならぬ服への愛情ゆえに乗り越え人を動かし成功に導くかを描いたドキュメンタリーでもあります。

 美術館展示をめぐり「ファッションはアートか?」との問いにゴルチエ、ラガーフェルド、ガリアーノは「ノー」と異論を唱え、悩み苦しむボルトン。8か月の準備期間は膨大すぎる展示内容をそろえるには時間が足りなさすぎる。西欧のデザイナーはなぜオリエンタルに惹かれつつ、一方では中国をステレオタイプに描いてきたのか。次々と登場するセレブたちも必見!

文/大林千茱萸