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 男は券売機で「極豚ラーメン(期間限定)」「ギョーザ」「ミニチャーシュー丼」の食券を購入し、9席あるカウンターのいちばん隅の席に座った。客側から提供順の希望がなければ、「ラーメンとギョーザを同時に提供するのがマニュアル」と店舗関係者。主に接客したのは店長だった。

「3品を同時に運び、まずラーメンから置いたんです。その瞬間、胸ぐらをつかまれ“ギョーザを先に出せと言ったろ!”と激しく怒り始めました。そんなことはひと言も言っていなかったのに……」

 まるでナンセンスコントの導入のようなやりとり。店長は目が点。ところがスイッチが入った男の目はマジだった。

 ちょび髭をたくわえ、頭はスキンヘッド。上下ジャージ。“しばいたろか”というセリフが抜群に似合いそうな雰囲気の32歳の大男は、酔った状態で初来店したという。

 現場は兵庫・明石の大通り沿いにある24時間営業のラーメンチェーンだった。経緯を、兵庫県警明石署に聞いた。

「被疑者は11月8日午前4時ごろ客として来店しトラブルとなりました。店長から午前6時57分に退店を申し込まれても断り、再三帰るように要求しても、午前8時まで退店しなかったため、不退去容疑で現行犯逮捕しました。店側がほんまに困っていました。少し暴れたくらいなら保護ですみますが、そんな程度じゃないですからね。ワーワー言うてわめき散らして……」

 12月某日、犯行時間に近い午前5時半、記者は同店を訪ねた。ラーメンとギョーザの食券を購入。注文から約8分後、ラーメンとギョーザが一緒に提供された。スタッフはきびきび動き接客態度も文句なし。なぜ、男はキレたのか。

「はっきり言って、営業妨害に近かった。周りのお客様には席を移動していただきましたから。“上のもん出せ!”などとわめき続けるので、外に連れ出してなだめましたが収まらず……隣のマンションに住む方はみんな目が覚めてしまったと思います」(店長)

 様子を見かねたアルバイト店員が警察に通報。警官が駆けつけると落ち着いたため、警察はその場を後にした。だが、男は再び怒り始めた。ヤクザを気取りたかったのか、こう叫んだ。

「“下のもん呼ぶから待っとれ!”“社長出せ!”“マネジャーを出せば考える”などと言うので、エリアマネジャーと電話で話してもらいましたが、怒りはいっこうに消えない。とにかく、ほかのお客様にご迷惑をかけるわけにはいかないので、もう1度、警察を呼びました」(店長)

 ラーメンがのびる、ギョーザが冷める心配をすることなく、男の怒りは沸点モード。

「警官の説得にも応じないのには驚きました。24時間営業なので酔ったお客様もわりと多く、警察ざたもありますが、たいていは警官が来ると静かになるか、黙って帰るのに……」

 と店長もア然。

 逮捕後は一転、警察の取り調べに「大人げないことをしました、と罪を認めて謝ってはいました」(明石署)

 自宅を訪ねると、不在のお騒がせ男に代わって妻がこう答えた。

「旦那もいろんな報道とか見て、もう参っているんで……。反省はしていると思うんですけど……本当すみません」

 実は会社員で2児のパパ。一方、被害に遭った店は、事件後1~2週間はギョーザとラーメンを注文して提供順を見てひと言いうケースや、「店を支持するからギョーザを無料にしてくれ」などと茶化すケースが頻発したという。

 しかし野次馬で売り上げ増とまではいかなかったようで踏んだり蹴ったり。男はその後、来店していない。