20160719_himonya
碑文谷公園では池の水が抜かれ、残る遺体の捜索が続けられていた

 目黒区・碑文谷公園内の弁天池で無職・阿部祝子さん(88)がバラバラの遺体で発見された。どこで殺害され、どうやって公園まで運ばれ遺棄されたのか? 謎の多い事件にマンション住人も不安な表情が消えない。

「グレー系の服を着て、本当に品のいいおばあちゃんという感じ。88歳なのに背筋もピンと伸びて、カートも使わないで、買い物かごを手に提げて買い物をしていましたよ」

 同じマンションに住む住人が、阿部祝子さんの外見をそのように描写する。

 誰かの恨みを買うようなこともなく、周辺とのトラブルの気配もなく、ごく普通に暮らしていた老婦人が、ある日、バラバラ遺体で発見された。

 最後に生存が確認されているのは、先月19日午後8時ごろ。遊びに来ていた長男家族を見送った後、自宅に戻ったとされる。

 以降、マンションの防犯カメラに、阿部さんが外出する姿は映っていない。当然、捜査本部は、阿部さんがマンション内のどこかで、何らかのトラブルに巻き込まれたと見立てる。

「気味が悪い。ここは犯罪とは無縁の静かな場所だった」(70代の女性)

 という閑静な住宅街。しかも、

「犬の散歩をしたり、子どもがたくさん遊びに来たり、近隣住民の憩いの場だった」(50代女性)

 そんな碑文谷公園の池に、バラバラにされ遺棄されるという、あまりにもひどい最期。

 近隣住民の間では「よほど強い恨みがあったのかしら。バラバラにするなんて」(60代女性)といぶかしがったり、「あのマンションは6月くらいまで改装して、人の出入りが多かった」(80代女性)と不安な表情を見せる。

 マンション内で、いったい何があったのか? マンション住人は今も、出入りの際に何らかの身分証明書の提示を求められている。

「6月19日の夜は窓を開けてテレビを見ていたけど、変な音とか気がつかなかったなあ。6月30日には警察が来て、顔写真を撮られましたよ」(マンションの住人)

 捜査の目はマンション内に向いているのか。

「阿部さんと仲のよかった人がいるんだけど、その人の部屋には、警察の出入りが激しかったわね。それから阿部さんの部屋の下にあるプールとの間の足場になりそうな場所は、本当に念入りに検証していたわよ」(別の住人)

 犯罪心理学に詳しい新潟青陵大学の碓井真史教授は、

「時間をかけてバラバラにしたということは、逆に逃げられない状況があったのかもしれませんね。殺したらさっさと逃げるのが一番いいんですが、殺害したのが自分の部屋だったとかね」

 と前置きしたうえで、バラバラにして運ぶという手間暇をかけたわりには「遺体の隠ぺいがずさん」と見る。

 そこから浮かび上がってくる犯人像とは?

「計画的な犯行で、賢く体力もある。だが常識的な感覚がズレている人間ですね。遺体を運ぶのには、分割したといっても体力が必要です。

 防犯カメラに映らないというのは冷静じゃないとできないことです。殺すまでは計画的で隠ぺいがずさんというのはよくあります。普通、すぐに捕まるのですが……。過去のどんな犯人像と照らし合わせても、ピッタリくるものがない」

 19日午後8時ごろを最後にプツリと途絶えた阿部さんの行動。だが、その後よく似た人を目撃したという、近隣住民の話も。

「阿部さんのマンションの隣に公園があるんだけど、そこで6月20日朝6時ごろ、ブランコに座っている阿部さんのような背格好の老人を見たっていう人がいるんだ。朝6時からブランコに乗っている老人なんてそうそういないから、覚えていたみたいだよ」(近隣マンションに住む男性)

 マンションの防犯カメラに映ることなく阿部さんは公園に行けたのか。だとすれば、阿部さんの殺害現場はマンション内と限定できなくなる。阿部さんの部屋には、鍵や財布も残され、血液反応も出なかった。怨恨か、はたまた快楽殺人者が付近の高級住宅地に潜んでいるのか。

 犯人逮捕まで、謎と不安は尽きない。