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 NPO法人・東京キャットガーディアンが設置する『ねこねこ110番』には「猫を飼えなくなった、助けてほしい」といったSOSの電話が日夜かかってくる。その一方、里親が見つかり、幸せをつかむ猫も。

 たまこちゃんが桑野さんご夫妻の家にやって来て約1年がたった。たまこちゃんは子猫のとき、とある川べりの深い土管の底から救出された。

 か細い声で鳴いているところを通りがかりの人が発見し、「ねこねこ110番」の電話を受けた山本さんの指示のもと、長い棒の先にネズミとりもちをつけて、たまこちゃんを引き上げたという。その後シェルターに運び込まれ、長い時間をかけて丁寧にとりもちは取り除かれた。

 一方、ご主人とふたり暮らしの桑野さんは、猫を飼いたいといろいろな里親募集のサイトをチェックしていたとき、東京キャットガーディアンと出会った。

 猫をペットショップで買い求めるのではなく、里親としてもらい受けることで、何かの役に立てたら。そういう気持ちもシェルターに足を向かわせたという。たまこちゃんとの出会いは運命的だった。

「ほかの子は目が合うと遊ぼうと近づいてくるのに、たまこは目が合うと怯えて隠れてしまって、出てこなかった。 この子は何かとてもつらいことがあったのかな……と思うと胸が締めつけられました」

 過去も含めて、この子を大切に育てたい。桑野さんはその日に里親になる決心をし、家に連れ帰った。

 しかし、人見知りは想像以上で、家に入れてから1週間は物陰に隠れて、人前にはまったく出てこなかった。

「姿を見せないし、エサにも手をつけない。夜通し鳴いているのが聞こえて夫も眠れず、“飼っていける自信がない”と言われたときはどうしようかと思いました」

 しかし、夫妻は静かに見守り続けた。しばらくすると姿を見せるようになり、名前を呼ぶ桑野さんのもとに、うれしそうに来るようにまでなった。

 今では食欲旺盛な健康優良児。ふたりの穏やかで大きな愛情が、たまこちゃんにゆっくり伝わっていったのだろう。あの日、土管で泣いていた小さな迷い猫は、かけがえのない家族を手に入れた。