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伊勢志摩サミットを控えて車両検問する警察官

 熊本地震のショックも癒えぬ中、遠く離れた東日本の地下が不気味にうごめいている。東日本大震災から5年。必ずセットでくるとされる“大地震のあとの大噴火”が接近しているおそれがあるという。

 2000年夏、全島避難につながる大噴火があった三宅島の現在の状況はどうか。

「火山性微動は12日午前3時にはおさまりました。同日の火山ガスは約1200トンを観測しました。'13年9月以降は1日平均約500トン以下で推移しており、火山ガスが1日1000トンを超えたのは'13年8月以来です」(同島火山防災連絡事務所)

 三宅村の職員によると、火山性微動の発生時刻が深夜だったこともあり、揺れに気づいた島民はほぼいなかった。風向きによって麓まで漂うことのあるガスについても、なんとなく硫黄臭を感じる程度だったという。

「三宅島の火山活動は太平洋プレートがフィリピン海プレートにもぐり込んで起きているもので、突然洋上に現れた西之島新島と同じタイプ。東日本周辺では太平洋プレートが、北米プレートやフィリピン海プレートにもぐり込んで溶けてマグマになり、火山の地底にどんどんマグマをため込んでいる。

 巨大噴火を警告するのは、東日本大震災以降、それまでの約3~4倍のスピードで5年以上かけてため込んだこのマグマの蓄積があるからです」(立命館大学・歴史都市防災研究所の高橋学教授)

 素人考えでは九州に目が向きがちだ。しかし、震災の傷痕も生々しい熊本地震で注目される九州周辺の火山については、すでに噴火活動でマグマを吐き出しており、いわば袋の中身がカラッポ。新たなマグマの大供給もないため、

「噴き出すマグマがない。当面、大爆発は考えにくい」(高橋教授)

 さて、東日本の火山で巨大噴火が発生した場合、どのような被害が想定されるのか。

「噴煙が高度1万メートルを超えて空気の薄い成層圏に達すると、約2週間で火山灰は地球を丸ごと覆います。“パラソル効果”といって、太陽の光を火山灰の傘で跳ね返してしまうんです。波長の短い青い光は地上に届かず、太陽は夕焼けみたいに真っ赤なままになります」(高橋教授)

 想像するだけで気味の悪い光景だ。実生活上の問題としては何が考えられるのか。

「飛行機は飛べなくなるし、農作物には灰が積もって不作になる。コンピューターに細かい灰が入り込んで動作不良を起こします。コンピューター制御された交通網、通信網など社会インフラはマヒし、大パニックを引き起こすおそれもあります」(高橋教授)

 もうひとつ、気になるのが茨城県南部を震源地として16日夜に発生した最大震度5弱(M5.5)の地震の評価だ。揺れは東北地方から中部地方にまで広がり、首都圏の鉄道各社が一時運転を見合わせた。茨城県つくば市では8歳男児が自宅の2段ベッドから降りる際に転落し、ひじを骨折するケガを負った。

「もともと地震多発地帯ですが、東日本大震災の余震と考えていいでしょう」(高橋教授)

 しかし、地震でいえば、やはり西日本のほうが危険な状況にあるという。

「繰り返し言っていますが、熊本地震は南海トラフ地震の前兆です。国内最大の断層帯である中央構造線は台湾から沖縄、九州、四国、近畿へとのびています。ここ2~3年以内に広範囲で連動型大地震が起きる可能性があります。

 台湾では12日、M6.4とM6.3など比較的大きな地震がありました。地震も噴火も止めようがありませんが、被災を最小限に抑える努力はできます。警戒を怠らないでください」(高橋教授)

 ちなみに、今週26、27日に開催される三重県の伊勢志摩サミット会場は、

「政府もマスコミもしれっとしているけれど、中央構造線に近い危ないエリア」(高橋教授)