テリー伊藤

 高齢ドライバーによる相次ぐ事故を受け、次第に広まりつつある「免許の自主返納」を促す風潮。67歳となった現在も現役ドライバーのテリー伊藤さんは、こうした免許返納問題をどのように捉えているのだろうか。

免許返納問題にちょっと待った!

「僕は、免許返納はしないほうがいいと思ってます」

 と語るのは、辛口のコメントでおなじみのテリー伊藤さん(67)だ。自他ともに認めるカーマニアで、これまでに50台以上の車を乗り継ぎ現在も3台を所有。この日も三菱デリカで、鎌倉から都内まで出社した。

「事故を起こすのが、高齢者ばかりのように報道されているけど、若者だって多い。返納するのが当然という風潮はおかしい」

 テリーさんは、免許を返納することで車への愛情も消えてしまうと言う。

「先日、取材で行った店のオーナーが、すごくきれいな30年前のフランス車に乗ってました。聞くと、前の持ち主は92歳の方で、30年間、大事に乗っていたらしい。僕らの時代はまだ貧しくて、車は憧れで、ステータス。ワックスをかけて何十年も愛した車、好きなときに好きな場所に行けた車は、持ち主にとって人生の一部。それを奪われたら、侍が刀を奪われたようなものです」

 では、返納せずに車に乗り続けるために、高齢者はどうすればいいのか。

「うちの兄貴は、今年76歳なんだけど、夜は運転しない、慣れない道は走らないがモットー。僕もそう。それに大きな車に乗らないこと。横幅が広くなると、感覚の違いで事故が起こりやすい。そして、スピードを出さないこと。僕はいつも首都高の左の走行車線を60kmで走ってます。わずか5〜10kmの違いで視界がグンと狭くなるんです」

 できれば、自動ブレーキが装備された車を選びたい。

「軽なら安く乗り換えられるし、リース車という手もある。そのくらいの投資を惜しんじゃいけないね」

 また、安全のためには、訓練も必要だと言う。

「僕は雪が降ると、広い駐車場でわざとスピードを出してブレーキを踏み、車がどう横滑りするかチェックする。

 高齢者には、駐車場にうまく入れられない人や斜めに止めてしまう人も多いけど、練習すればできるようになる。また僕は、軽のスポーツカーに乗りたいから太らないようにしている。食事に気をつけ、ランニングもしている。免許を維持するために、身体を鍛えるのも大切なことです

 さて、高齢ドライバーがいる家族は、どのタイミングで返納を提案すべきか。

「遺産問題と同じで、本人が元気なうちにどうしたいか聞いてみるのがいい。まだ運転したいなら、尊重してあげてほしいですね」

<プロフィール>
テリー伊藤◎1949年生まれ。演出家、テレビプロデューサー、評論家。『サンデー・ジャポン』などレギュラー番組多数