華やかな芸能界をはじめ、一般社会にも潜むたくさんの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」。持ち前の鋭い観察眼と深読み力に定評があるライターの仁科友里さんが、「ヤバジョ」の魅力をひもといていきます。

泰葉

第2回 泰葉

 すべてのオンナはヤバいもの。「良いヤバさ」か「悪いヤバさ」かが問題だと私は思っています。松居劇場で世間を騒がせた松居一代は、私から見ると「良いヤバさ」ですが(その理由は連載第1回を参照)、それでは「悪いヤバさ」代表は誰かというと、泰葉だと思うのです。

 ここで簡単に泰葉のヤバい言動を振り返ってみましょう。

 泰葉は噺家の春風亭小朝と結婚していましたが、2007年に離婚しています。離婚後、小朝をオフィシャルブログで「金髪豚野郎」呼ばわりしたことで話題を集めましたが、この時は特にコトを起こすことはありませんでした。

 それから10年経った2017年、泰葉は小朝のDVを暴露しだします。勢いがついたのか、実家である海老名家の秘密(母親の冷酷な仕打ち、海老名家の脱税、甥からのセクハラ)を暴露し、世間の注目を集めます。ネパール人の青年や坂口杏里を養子にすると言い出したり、元夫である小朝や和田アキ子を提訴すると記者会見も開きました。ヘアヌードを披露したり、フェイスブックで知り合った年下のイラン人男性と婚約会見を開きました。都知事選への立候補も宣言しています。

 突如マネージャーにストーカーされていると訴えましたが、本誌『週刊女性』によると、嫌がらせをしていたのは泰葉のほうで、資金難から音楽活動ができなくなったことを泰葉が逆恨みし、マネージャーの自宅の前に、犬のフンと出刃包丁を置いたそうです。CD制作のために、クラウドファンディングでファンからお金を集めましたが、CDは届かず、お金も返ってこないなど、金銭トラブルも多数抱えているようです。

 言うまでもなく、泰葉の言動はヤバいですが、大きなことをぶち上げても何ら実現していないことにお気づきでしょうか。だって、カネがないから無理なのです。養子を迎えるのも、有名人を訴えるにも、まず必要なものはカネです。ブログで自己破産をにおわせたり、住む家がなくて車で生活しているという記述もありましたが、泰葉は経済的に相当困っているようです。

「貧すれば鈍する」ということわざのとおり、あまりにも経済的に追い詰められると、誰しも精神状態は悪くなります。泰葉は『女性自身』(光文社)に、かつて双極性障害を患ったことがあると告白していましたが、困窮がストレスとなり、病の再発などメンタルに悪影響を与えている可能性は大きいのではないでしょうか。

 泰葉はヤバい。が、もっとヤバいのは、実家の海老名家ではないかと私は思っています。

 メンタルの病を経験したことのある娘が奇行を働き、経済的にだいぶ行き詰まっている。もし泰葉が警察のお世話にでもなれば、林家正蔵、三平という海老名家が抱える噺家も騒動に巻き込まれることは目に見えています。にも関わらず、ここまで知らんぷりを決め込むのは、本当に愛情がないんだなと感じてしまうのです。

海老名家への違和感

 私が海老名家への違和感を持ったのは、あるテレビ番組がきっかけでした。『知ってるつもり?!』(日本テレビ系、2002年放送終了)という古い番組をご存知でしょうか。数人の芸能人がコメンテーターとなり、有名人の生涯を振り返るというものでしたが、この番組がグレース・ケリーを取り上げたことがあります。アカデミー主演女優賞を受賞し、モナコ公国のプリンス、レーニエ3世と結婚して引退するという華々しい経歴のグレースですが、実際の人生は苦渋に満ちていました。

 グレースの父親はオリンピックのメダリストにして、一代で財を成した大実業家。子どもたちを自分と同じようにオリンピック選手にすることを夢見ますが、兄弟の中でグレースだけスポーツが苦手だったため、父親からの評価は低かったそうです。グレースがアカデミー賞を受賞した時も「何か成し遂げるとしたら、姉のほうだと思っていた」と答えるなど、頑としてグレースを評価しません。グレースは受賞の記念に実家に共演者を招いてパーティーをし、客を楽しませるためにおどけてみせますが、父親は「もうたくさんだ。家に帰ってきてまで芝居をすることはない」と叫んで、パーティーを台無しにしたそうです。

 こういったエピソードに対し、芸能人のコメンテーターたちは「自分の思い通りにならないから気に入らない」「ほめてやればいいじゃないか」と父親を責めますが、その中でただ一人「父親の気持ちがわからないでもない」と発言したのが、泰葉の母、海老名香葉子(以下、カヨコ)です。「親の元に帰ってきたんだから、他の家族と同じようにすべきだ」と言っていましたが、これは「親の元では、親の望むとおりにしろ、そうでなければいらない」とも解釈できるのではないでしょうか。

泰葉は本当は母親に認めてほしがっている

 それでは、カヨコの「望みどおりの子」とはどんな子かと考えると、海老名家の家業からいって「噺家になる子」。今は噺家の世界も女性が増えているそうですが、圧倒的に男性のほうが多いことから考えると、カヨコにとって重要なのは息子であり、娘は二の次となります。

 泰葉はデビューシングル『フライディ・チャイナタウン』(1981年発売)でヒットを飛ばしますが、泰葉は、「母にこんな下品な歌と言われた」という意味のツイートをしていました(現在は削除)。一般的に考えれば、娘の作った歌がヒットしたら、親は大喜びするでしょうから、泰葉がショックを受けたことは想像に難くありません。しかし、上述したカヨコ発言から考えると、グレースがスポーツの選手でないからアカデミー賞を取っても認められなかったのと同じように、噺家になれない泰葉はどんなに結果を出そうと、カヨコのお気に召さないのだと思うのです。

 泰葉はカヨコへの恨みつらみを書く一方で、母親に許しを乞うために根岸の実家を訪れたり、母親を良妻賢母であるとほめるなど、精神的に完全に絶縁しているとは言えない状態です。泰葉はオフィシャルブログで、自らを超ファザコンと称していますが、本当は母親に認めてほしがっているマザコンなのではないでしょうか。

 還暦間近になっても、母親からの承認を求めてさすらう泰葉。大言壮語的な奇行も母親の気を引くためなのではないか。そう思うと、泰葉の奇行がなんとももの悲しく、「悪いヤバさ」だと見えてしかたないのです。


<プロフィール>
仁科友里(にしな・ゆり)
1974年生まれ。会社員を経てフリーライターに。『サイゾーウーマン』『週刊SPA!』『GINGER』『steady.』などにタレント論、女子アナ批評を寄稿。また、自身のブログ、ツイッターで婚活に悩む男女の相談に答えている。2015年に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)を発表し、異例の女性向け婚活本として話題に。他に、男性向け恋愛本『確実にモテる世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。