華やかな芸能界をはじめ、一般社会にも潜むたくさんの「ヤバい女=ヤバ女(ヤバジョ)」。持ち前の鋭い観察眼と深読み力に定評があるライターの仁科友里さんが、「ヤバジョ」の魅力をひもといていきます。

松居一代

第1回 松居一代

 約1年前に日本を震撼させた、タレント・松居一代(以下、カズヨ)の松居劇場。名前の知られた女優が素顔でカメラの前に立ち、バイアグラがどうのセックスがどうの言う姿を見て、それが事実かどうかより、カズヨの精神状態を心配した人のほうが多かったのではないでしょうか。

 泣いたりわめいたりといった言動は、女性にもウケが悪かったようです。カズヨは『週刊文春』(文藝春秋)が企画した「女が嫌いな女」2017ランキングで、1位に輝いてしまいました。カズヨに票を投じた女性たちは、その理由を「ヒステリッククイーン」「執念深さが怖い」「暴れだすとすべてに牙をむき、破壊する」としていますが、これは「ヤバい女は嫌われる」と解釈することができるでしょう。

 ヤバい女になりたくない、もしくはヤバい女と関わりたくない。こう考えるのは、善良な人たちです。ちなみに私は、女性はそもそもみんなヤバいと考えています。社会性や常識でそれを閉じ込めているけれど、時と場合と相手によって、ヤバさが表に出たり引っ込んだりするだけ。世の中はヤバいかヤバくないかでひとくくりにするけれど、「良いヤバさ」と「悪いヤバさ」があって、カズヨの場合は実は「良いヤバさ」な気がしているのです。なぜなら、カズヨのヤバさからは、明るさすら感じられるからです。

 なぜカズヨは「良いヤバさ」なのか。

 理由は3つあります。

 1つめは、カズヨのターゲットは常に1人だから

「真実をお伝えしたい」と暴露動画をアップし続けたカズヨがしつこいことに疑う余地はありませんが、敵(今回の場合は船越英一郎)以外は攻撃しないという特徴があります。ターゲットはお気の毒ですが、無差別的に関わりのある人を傷つけるヤバさがないので、周囲はある意味安心して見ていられるのです。

 2つめは、カズヨが経済的に困窮していないから

 暴露動画以降、カズヨを地上波のテレビで見ることはほとんどありません。抵抗はしてみたものの、離婚もすることになってしまいました。仕事も夫も失い、カズヨが路頭に迷ってしまうようなはっきりした転落は「悪いヤバさ」です。しかし、凄腕投資家として名高いカズヨには、松居劇場の直後も『ビビット』(TBS系)のレポーターに、4000万円のベントレーをキャッシュで買ったと発言するなど、相変わらず経済力があり、生活の心配は皆無です。

「あの人、お金持っていてうらやましいけど、どうしてあんなことしちゃうんだろう」といった具合に、羨望とかすかな笑いを引き起こすのが、「良いヤバさ」なのです。

 3つめは、味方がいるから

 自分の母親が、なさぬ仲とはいえ、父親を動画で誹謗中傷したら、子どもは母親に愛想をつかしそうなものですが、カズヨと一粒種である子息は、そうではないようです。

 カズヨのオフィシャルブログには子息に3回目の結婚を勧められた話や、カズヨの誕生日にバラの花束を贈ってきたことがつづられており、良好な親子関係を思わせます。カズヨはブログの読者を“家族”と呼んで、信頼を置いているようですが、ネットの世界は所詮はバーチャル。何かあった時に駆けつけてくれる人が1人いるほうが、安心です。今後、カズヨが何かやらかしても、この子息が最後の最後でストッパー役を果たしてくれることでしょう。