勝手に詐欺事件で名前を使われた大月みやこ

「あれ全部ウソっぱちだったの? まさか捕まっていたなんて……」

 週刊女性の取材によって被害を受けていた事実を知った70代の女性・Aさんは、腰を抜かした──。

取材で明らかになった
“新たな被害者”Aさん

 演歌歌手の大月みやこ(74)の妹を装い知人から現金をだまし取ったとして、世田谷区の無職、梅原幸子容疑者(72)が1月12日に詐欺の疑いで逮捕された。

「2017年から翌年にかけて、容疑者は知人の女性に“姉が所属する歌手協会に資金を預ければ、有利な配当が得られる”とウソの投資話をもちかけ、現金約650万円をだまし取った。本人は容疑を認めている」(テレビ局記者)

 大月みやこといえば、10回もの紅白歌合戦出場歴があり、代表曲『白い海峡』で日本レコード大賞も受賞した大物歌手。なぜ被害者はまんまとだまされてしまったのか。

「女性は“身なりがしっかりしていて、飲食代もおごってくれたから信用してしまった”と話している」(前出・記者)

 事件を受けて、大月は「一方的に大月みやこの名前を使った事実無根の詐欺行為に、私も大変困惑しております」(一部抜粋)とコメントを発表している。

 所属事務所によると、

「大月と今回の容疑者には何の接点もありません。そもそも彼女はひとりっ子で、妹がいるはずはないんですよ」

 警察には同様の被害相談が複数寄せられており、現在、余罪も捜査中だという。

 そんな中、19日に週刊女性記者が容疑者の自宅マンション周辺を取材していると、冒頭の“新たな被害者”であるAさんの存在が明らかになった。

「梅原さんの事件について取材をしているのですが……」

 そう声をかける記者にはじめはキョトンとしていたが、事件内容を伝えると、

「え? 彼女は詐欺師だったの? まんまと引っかかったわけ? 夫には何も言っていない。なんて言おう……」

 顔面蒼白、足を震わせながら、状況を語ってくれた。

「梅原さんとは週に2回ほど会って、世話をしてあげていました。彼女は足が悪く、歩くときは手押し車なので、いつも日用品を届けていました」

 2人は逮捕前の1月8日にも会っており、次回は12日に会う約束をしていた。しかし、この日は逮捕当日。自宅を訪ねたがすでに不在だった。

「寂しい人で、友達は私だけ」
Aさんがすべて手助け

 Aさんはどんな経緯で詐欺に巻き込まれたのか。

「私は昔、店をやっていて、そこに彼女が来店して出会いました。はじめは大月みやこさんの妹だと言わなかったけれど、店に来ているほかの人から、“彼女は(大月の)妹だ”と聞いていたんです」

 容疑者は2年半ほど前に同じ世田谷区内のアパートから現在のマンションに引っ越しており、旧知のAさんは長年世話をしていたという。

自宅周辺では大月の妹だと話していなかった

「彼女はひとり暮らしで、寂しい人だった。友達は私だけだと思うから、すべて手助けしてきました」

 悲しそうな目で話すAさん。

「姉は2人、夫や娘もいたそうです。夫と一緒の写真も見せてくれた。白百合学園の卒業だとか、実家は上野で、幼いころは生活が苦しかったなどと、事細かに聞かされました。今となっては、どこまで本当かわかりませんが……」

 そう言って、ため息をつく。

「大月さんの妹だと本人から打ち明けられたのは、最近になってから。よくコンサートに行くと言っていました」

 大月みやこは大阪の出身で、ひとりっ子ということは調べればわかりそうなものだが、他人を深く詮索しない性分のAさんは気にしていなかった。

 被害内容について聞くと、

「同じように、大月さんの名前を使って投資の話も持ちかけられた。100万円くらいなら、目をつぶりますよ。(被害は)1000万円以上。恐ろしくて金額も言えない……」

 卒倒しそうになりながら、声を振り絞った。

 ひとり暮らしの高齢者が、なぜこれほど多額の金を必要としたのか疑問だが、別の知人によると、

「何枚もクレジットカードを持っていて、よく高級そうな海鮮食品や健康器具を買っていたみたいですね。移動はいつもタクシーでした」

 という証言もあり、浪費癖が身についていたことがうかがえる。

「最近はお金に困っていたようで、お金も貸していた。役所で生活保護の申請も手伝ってあげたのに……」

 青ざめた顔で語るAさん。これから夫にすべて打ち明け警察に行くつもりだという。

狭い範囲のコミュニティーを信じる
高齢者の心理を突いた事例

 有名人の名前をかたった詐欺事件。ほかにも事例はあるのか、フラクタル法律事務所の田村勇人弁護士に聞いた。

「課金すればGACKTと直接メールできる、というサービスにだまされた人がいます。さらにお金を出せば実際に会えると言われて振り込んだものの、会えなかった」

 今回の事件については、

「大月さんの妹と偽ったのは高齢者だからネットですぐ調べない、狭い範囲のコミュニティーを信じてしまう心理を突いた事例だと思います」

 またこのような詐欺事件から被害を防ぐ方法について、ベリーベスト法律事務所の松井剛弁護士が解説する。

「投資目的でお金を預けるなら、事前に契約の書式や配当の仕組みを説明する資料を見せてほしいと伝えるべき。ひとり身の人は標的にされやすいので、支払う金額が多いときは立ち止まって、第三者に相談してください」

 今回の事件は知人の高齢者によるもので、いつ誰にだまされるかわからない。普段から警戒が必要だろう。

有名人を装った詐欺事件の事例

■時期:2013年7月
内容:前田敦子や松本潤などの芸能人を装い、会員から金をだまし取っていた出会い系サイト運営者が逮捕
被害:約136万円

■時期:2020年10月
内容:GACKTの名をかたったメール詐欺が横行しているとして、本人が注意喚起
被害:「お金を払えば本人に会える」と言って現金を振り込ませる

■時期:2020年10月
内容:人気バンド「DIR EN GREY」のメンバーになりすました男が身内から金をだまし取り逮捕
被害:約5300万円

■時期:2020年11月
内容:「ZOZOTOWN」前澤友作元社長になりすました偽のSNSアカウントが複数確認され、本人が注意喚起
被害:「お金を配る」と言って連絡し個人情報がだまし取られるおそれがあった