左からティーチャさん、小笠原祐子さん、石塚ひろしさん、稲川素子さん

 70代で東大大学院に進学したスゴ腕経営者、73歳で夢を叶えた演歌歌手、81歳でデビューしたセクシー女優、86歳の“若手”芸人…… 60歳を過ぎてから新たなる“挑戦”をした「現役のすごい人」4人を紹介します。

65歳で慶應、72歳で東大大学院!

「現役のすごい人」に直撃!(1)

稲川素子さん

 50歳にして外国人専門の芸能事務所を起業し、ビジネス的にも大成功を収めた名物社長・稲川素子さん(87)。国際的な人間関係にくわえ、さまざまな団体・法人の代表を務める業界のフィクサー的な一面も持つスーパーウーマン。それだけでもすごいのだが、なんと65歳で慶應義塾大学に復学、さらに卒業後東大大学院に進学という超異色経歴の持ち主!慶應卒業後、すぐに東大大学院を受験するも、2度の“浪人”を経験したという。

「3度目の正直、72歳で合格いたしました。私の受験番号が出ていたあの日が、わが生涯最良の日でした」(稲川さん)

 その後稲川さんは東大大学院に8年間在籍し、昨年2020年に全課程を満期修了したという。現在は博士号取得に向けて動いているそうだ。

「私は常々みなさんに『職人になれ』と言っております。私はなんの職人になれるだろうと考えたとき、知識を身につけて『話すことのプロ』になりたいと考えました。東大で学んだ私は別人になって修了しました」(稲川さん)

「言ったらすぐ実行する」をモットーとする稲川さん。現在は「日に日に若くなること」を目標にしている、もはや向上心の化身だ。

「読者のみなさんも、いつからでも遅くはありません。こんな私のやってきたことが、みなさんの励みになるならどんなにうれしいことでしょう。私の思いを束ねた“心の花束”を、みなさんに受け取ってほしい。大きな花畑をみんなで作りましょう」(稲川さん)

稲川素子さん 撮影/吉岡竜紀

 1934年生まれ、福岡県柳川市出身。ルビー・モレノをはじめ、数々の外国人芸能人が所属する稲川素子事務所社長。国連UNHCR協会理事など、多数の団体の役職を兼任する。趣味は読書、テニス、ダンス。

新しい“シニアの星”のシャイな素顔

「現役のすごい人」に直撃!(2)

石塚ひろしさん

 180センチの長身、スタイル抜群の色男!すでにベテランの風格を漂わせる“新人演歌歌手”の石塚ひろしさん(79)。73歳での業界最年長デビューから、精力的にCDを出し続けている新しい「シニアの星」だ。

 中学校を卒業後「金の卵」として故郷青森県から集団就職で上京。母が家で聴いていた三橋美智也や春日八郎の歌声に魅せられていた子どもだったという。

 日中は新聞配達、夜は流しで歌う生活をし、結婚をきっかけに運送業での“トラック野郎”や、社長お抱えの運転手などを経験した。

 そんな石塚さんのデビューのきっかけは、ひとまわり年上の愛する妻との死別だった。

「家内が死んだショックで酒びたりになりました。最初は歌うなんて気持ちにはとてもなれませんでしたが、通い始めたカラオケスナックで人の歌を聴いていると歌好きの虫が起きてきて、自分もマイクを取るようになりました」(石塚さん)

 その美声はお店でも評判になり、憧れの作曲家の先生へとつながり、とんとん拍子でデビューが決まった。

 現場で歌えば注目を集め、多数の女性ファンを獲得しているそうだが、本人はプロデューサーも驚くほどシャイなのだそう。

「私はファンサービスというのがいちばん苦手なんですよ(笑)。女性と2人で歌うっていうのも昔からダメで……」(石塚さん)

 クールな“イケオジ”的風貌に似合わず、仕事で女性とデュエットをした際でも顔を真っ赤にしてしまうチャーミングな一面もあるという。読者のみなさん、そんな可愛い石塚さんは60過ぎてからの「推し活」にもぴったりですよ!

石塚ひろしさん 撮影/北村史成

 1942年青森県生まれ。BSトゥエルビ『いきいき歌謡塾』、準レギュラー的に出演中。最新シングルは『男って奴はサ』(キングレコード)。ちなみに同レーベルには、業界最年少デビューの歌姫・ののちゃんも所属している。

世界最高齢81歳でセクシー女優デビュー!

「現役のすごい人」に直撃!(3)

小笠原祐子さん

 なんと御年81歳でAV女優としてデビューした、小笠原祐子さん(85)。世界最高齢でデビューした彼女だが、もともとはごく普通の主婦だったそう。

「結婚生活35年、夫とべったりだったからね。59歳で死に別れてね、今までを取り返すみたいに飲み歩いたわね(笑)」(小笠原さん)

 持ち前の好奇心とコミュニケーション能力の高さで、声のかかるままスナックや居酒屋の店長など、次々と60歳を過ぎてから新しいことに挑戦し、周囲から「ママ」と慕われていた小笠原さん。80歳を前に仕事もそろそろリタイアを考えていたころ、旧知の友人から、突然AV女優へのスカウトを受けたという。

「あたしはダンナ以外の男は知らないし、亡くなってからセックスなんかずーっとしてなかったのよ。でも撮影現場を見学したときに『あたしがやるならイケメンの若い子じゃなきゃやだな~』ってひとり言を言ったら『そういうのをちゃんとそろえます!』って(笑)。2週間後には撮影の段取りができたって連絡してきたんで、心を決めました」(小笠原さん)

 現在主演作は7作品という、業界最高齢の人気女優に!

「あたしの生き方ってのはね、ダンナがいないから自由にできるのよ。みんなにやりなよってすすめられることじゃない。でもね、新しいことをするっていうのは本当に楽しいこと。こんなご時世だからなかなか難しいけど、同世代のみなさんにはなるべく外の空気を吸って、いろんな刺激を受けてほしいと思います」(小笠原さん)

 今秋には1年ぶりの撮影も予定している小笠原さん、熟女AV業界の金字塔を今後も打ち立てていくこと間違いなし!

小笠原祐子さん 撮影/近藤陽介

 1935年生まれ、神奈川県横浜市出身。趣味は車の運転で、現在も若者に運転を教えているとか。最新作は『お婆ちゃん逆ナンパ』(2019 ルビー)。「同世代の方で、AV女優をやってみたい方がいたらご紹介しますよ(笑)」(小笠原さん)

年金もらう愛され“若手芸人” 

「現役のすごい人」に直撃!(4)

 ●ティーチャさん「めいどのみやげ」

 芸人史上初、年金をもらう傍らデビューを果たした人がいる。お笑いコンビ「めいどのみやげ」のティーチャさん(86)。娘のサッチィーさんとともに73歳でコンビを結成、史上最高齢、当時は故・桂歌丸師匠より1歳年上の“若手芸人”としてデビューした。

 大学卒業後就職するも、演芸の世界でも活動。最終的な職業は「高校の体育教師」だった。

「48歳で教員免許を取得し、49歳で体育の先生を始めたんですが、始まりの15分は『俺の時間』だと決めていて、ネタを披露しながら授業の説明をしていました。あるクラスでウケたのが違うクラスではウケなかったりして、それも勉強になりました」(ティーチャさん)

 現在のネタの多くは「B29を竹槍で落とした」などの昔話や、「老い」そのものを題材にしたもので、普通の若手ではありえないいぶし銀すぎる芸がウケ、寄席にも呼ばれるなど、年下の先輩芸人たちからも可愛がられている。また、俳優としても重宝され、入れ歯のCMや映画出演など、培ってきた芸を幅広く活用している。

 現在はコロナ禍でライブの仕事ができないのが残念だというが、来る日のために1日5000歩のウォーキングは欠かしていない。

「やっぱり年齢をいい訳にしたりして躊躇(ちゅうちょ)しないで、自分がやりたいと思ったことはどんなことでもトライするべきです!私もいつまでもわくわくしたい。今の言葉で言うと『キュン』ですか?死ぬ瞬間まで元気でがんばりたいと思います!」(ティーチャさん)

ティーチャさん

 サンミュージック所属。1935年生まれ、東京都出身。ピン芸人「年金ちゃん」としての活動も。映画『哀愁しんでれら』(2021)では土屋太鳳・田中圭との共演も果たす。現在、娘が作った『バリアフリー音頭』で新人賞を狙っているそう。

〈取材・文/高松孟晋〉