食事の際の環境と精神状態は脳にとって大切 イラスト/長田直美

 がん、高血圧、認知症。それぞれの名医が「一切、食べない」と断言する「命を縮める食材」。私たちが毎日口にしている、アレもコレもヤバイらしい。ついつい好きなものを選んでしまいがちだが、食事は命に直結するもの。脳神経内科医の内野勝行先生に話を聞くと、意外な答えが返ってきた!

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脳トレも食事も「イヤならやらない」

 地域密着型医療で、認知症患者やその家族と日々向き合う脳神経内科医の内野勝行先生は、その率直さから患者や家族とぶつかり合うことも!

「僕ははっきり言っちゃう。例えば、家族に脳トレをすすめられた患者さんに“イヤならやめちゃえ”とか(笑)。興味の持てないことをやるより、楽しく身体を使う運動のほうが認知症防止には有効です」(内野先生、以下同)

 脳トレも脳の血流量が増加し、脳を活性化させるのは事実。だが、血流が増加するのは脳の前頭葉の部分だ。

「認知症の患者さんは脳の中でも、特に記憶を司る海馬の部分の萎縮や血流低下が起きているものです。前頭葉ではなく、海馬を活性化しなければならないんですよ」

金町駅前脳神経内科院長の内野勝行先生 撮影/週刊女性写真班

 認知症予防の観点から、内野先生が避けたほうがよいと考える食生活とは?

「食事についても、脳トレと考え方は同じです。健康にいいからといって、本人が好きでもない食べ物を押しつけたり、長年の食習慣を無視したりというケースが最近しばしば見受けられます」

 コロナ禍で家族一緒の時間が増え、自分の親の食習慣が気になりだした息子や娘が親の食生活に口を出す、というパターンだ。

「でも考えてみてください。何十年も、朝は新聞を読みながら熱い番茶を飲んで、昼は近所の蕎麦店でビールと天ざる。

 そんな習慣の高齢者が急に、娘に朝から野菜スムージーを飲めと強制されたり、昼ご飯には一汁三菜そろえて出されたりしても“何だこれは”ってなるでしょ? 長年の食習慣が乱されたストレスから体調を崩すかもしれない」

ストレスのかかる食事はNG

 大事なのは、親世代が長年続けている習慣を注意深く観察し、それが変わった瞬間、身体に異変が起きていないか注意を払うことだ。

「長年の習慣が変わるのは、隠れた病気が原因のことが多い。また、ストレスのかかる食事は健康によくない。

 別にフレンチが悪いってわけじゃないけど、嫌いな人と食べるフルコースよりも、気の合った仲間で食べるカップラーメンのほうが身体にいいと思う。それぐらい、食事の際の環境と精神状態は大事です

嫌いな人とフルコースを食べるよりも、気の合う仲間とカップ麺を食べるほうが脳に良い!? ※画像はイメージです

 認知症の原因のひとつとされるのが、毒性の高いタンパク質の一種、アミロイドβ。これが脳内に蓄積されると脳神経細胞の死滅を招く。

「アミロイドβは高齢になっていきなりたまるものではありません。若いころから蓄積されていきます。いわば脳のごみ。

 たまった脳のごみを掃除するには、大前提として血の巡りをよくする必要がある。そうでないとアミロイドβが排出されないからです。そのためにはよい油をとるのが重要。

 僕は特売の安いサラダ油は避け、中性脂肪や悪玉コレステロールを減らすオリーブ油やエゴマ油を積極的に使っています」

 気の合った仲間と、自分のペースで楽しい食事をとる。そして、よい油とうまく付き合う。これが認知症予防の食の原則だ。

ある日の脳を元気にするメニュー

<朝食>
脳のおそうじスープ(内野先生考案の認知症を予防するスープ)
■材料
トマト大1個、蒸し大豆・くるみ各50g、桜エビ10g、すりごま大さじ3、ツナ缶(ノンオイル)2缶、塩小さじ1、中濃ソース大さじ1、こめ油少々
■作り方
(1)トマトをすりおろす
(2)蒸し大豆とくるみを砕いてもむ
(3)(2)に(1)とその他の材料を入れてもみ混ぜる。冷凍保存。食べるときは適量の熱湯を注ぎ、こめ油をたらす

<昼食>
・コンビニでおにぎり(忙しいときはこだわりません)

<夕食>
・脳のおそうじスープの素とオリーブオイルを使ったペペロンチーノ風パスタ

内野先生がおすすめする、脳を元気にするメニューの一例
内野勝行(うちの・かつゆき)●都内の神経内科外来や千葉県の療養型病院副院長を経て現在、金町駅前脳神経内科院長。脳神経を専門としてこれまで約1万人の患者を診てきた経験を基に、脳をクリーニングする「脳のおそうじスープ」を開発。テレビ出演多数。さまざまな医療情報番組の医療監修も務める。

(取材・文/ガンガーラ田津美)