手の平に乗るサイズの『ミニ骨壷』。骨壷には見えないモダンなデザイン

 誰にでも必ず訪れる、家族や大切な人との別れ。その供養の方法が今、変わってきているという。これまで故人は葬儀の後、先祖代々の墓にお骨となって入り、家の仏壇に位牌として祀られることが一般的だった。しかしーー、

「ペンダントや、小さいミニ骨壷にお骨を入れていただき、身近に故人を置いておく、手元供養という方法をご提案してます」

 こう語るのは、インテリア仏具などの販売を扱う『未来創想』の広報担当・井本さん。こちらのHPをのぞいてみると、今までの仏具のイメージからは想像できない、モダンなデザインの仏壇や骨壷が並んでいる。

「これまでお仏壇というものは、ご先祖さまを祀るものというイメージが強かったと思います。手元供養はご先祖さまではなく、亡くなった故人、例えば、お父さんやお母さん、お子さまを供養するもの。特定の宗教観に捉われない方法と言えます」(井本さん・以下同)

今のライフスタイルに合う仏壇を

 故人を祀るのに、宗教観を考慮しなくて大丈夫なのだろうか? 仏教であれば、伝統的な仏壇があり、供養の方法もは決められたやり方があるのだが……。

「確かにお客様が“こんなもので供養してもいいのか”という戸惑いの声もいただきました。しかし最近は、先祖代々を祀ったお墓やお仏壇がある実家から離れて生活している家族が増加しています。頻繁に実家には帰ることができず、お墓やお仏壇を管理しているのは高齢となった親世代。その世代で子どもたちには迷惑をかけられない、と墓仕舞いをしてお仏壇を破棄する方が増えているんです」

 この流れは実際に購入されている仏壇を知ると納得できる。仏壇総合サイト『いい仏壇』が'20年に行ったアンケートでは、もっとも購入されていたのはミニ仏壇で、45・7%を占めた。これに続くのはモダン仏壇で42%。また購入してみたい仏壇では、ミニ仏壇に15%の差をつけ、モダン仏壇がダントツトップの人気なのだ。これまでの“定番”である唐木仏壇はこのふたつに抑えられ、3位にランクインしており、今のライフスタイルに合う仏壇が求められていることが分かる。

高齢者が火を使う危険性などを配慮して、線香の替わりにアロマの香りを使う『火を使わないミニ仏壇』も

“考え方”にも変化が

 また、ここ2年続いたコロナ禍もこの動きに拍車をかけているという。

「感染症対策で、実家に帰りたくても帰れない時期が続きました。そういった背景も、お仏壇を破棄する決断の後押しになっていると思います」

 破棄した仏壇やお墓の代わりに、自宅でコンパクトにできる手元供養。また、お骨を自宅に置くということについても、世間の意識が変わってきていると井本さんは感じており、こう続ける。

「“埋葬することができないくらいの悲しみで、お骨を自宅で持っていたけど、そのことを人に言うことができなかった”、というお客さまがたくさんいらっしゃいました。

 昔は伝統的な宗教観ありきで、例えば“亡くなったらお骨はお墓に入れる”という考えが普通。でもこれまでになかったデザインの仏具で祀ったり、お骨を手元に置いたりしてもいいんだ、と考える方が増えてきていると感じます」

 今まで仏壇を置く場所は仏間という、ある種“特別な空間”だったが、手元供養では本棚の横や窓際、リビングの机の上などに置かれており、生活の一部として溶け込んでいるという。

「ミニ骨壷も、もともと、火葬場からいただく白い陶器の骨壷だと地味すぎるというご遺族の声からはじまったもの。外国ではこういった華やかな骨壷に入れることが一般的なんです」

 伝統的な仏壇から、モダンなデザインのものへーー。宗教に捉われない、新しい供養の方法。これから先、広がっていくのだろうか?

「決して伝統的な方法を否定しているわけではありません。お墓を維持すること自体が難しくなってきた時代、故人をどう偲べばいいのか、どういう方法ならできるのか、ということで生み出されたと思います。

 ですから、これまでの供養の方法がなくなるのではなく、手元供養というスタイルが共存していくと思います。どちらも故人に対する思いがあってのことですから」