きょうこばぁばさん 撮影╱齋藤周造

 フルタイムの介護士をしながら等身大の日常をSNSで発信、業務スーパーやユニクロなどを活用したおしゃれなレシピや着こなしが受けて人気インスタグラマーとなった「きょうこばぁば」。「家族4人“明日食べるものがない”時代もあった」と語る口調は明るく、穏やか。幸せになるコツは“お金にとらわれない”。その暮らしをのぞかせてもらった。

介護士を経て人気のシニアインスタグラマーに

 収入は上がらないのに、物価高騰に歴史的な円安……と、先の見えない経済状況が続く。日々の暮らしにはお金をかけずに、でもそれなりに充実した毎日を送りたい──。

 そんな中、SNSでにわかに話題を集めているのが「きょうこばぁば」(66)さん。投稿している“業スー”を活用したレシピやプチプラなファッションコーデなどが「現代の価値観にマッチしている」と、シニア世代を中心に人気を呼んでいる。

「今は安くていいモノがあふれている時代ですよね。私自身、100均のアイテムや、プチプラな洋服を生活に取り入れてから、日々の楽しみが広がりました

 穏やかな笑顔でそう語るきょうこばぁばさんだが、過去には笑うことができない時期もあった。

「昔は比較的生活に余裕がありましたが、20年ほど前に夫の事業が立ちゆかなくなり、すっからかんになってしまったんです。以降は家族4人で2Kのアパート暮らし。明日のごはんにも困って、近所のスーパーに働きに出た時期もありました。でも、なかなか職場になじめずに悩んでいたところ、介護士という職業を知ったんです」

 当時は今ほど介護士の認知度は高くなかったが、近所に有料老人ホームが開設されたのを機に介護の世界に飛び込んだという。現在は現場を離れているが、介護福祉士の資格を取り、15年間がむしゃらに働いた、と振り返る。

「一度どん底まで落ちて、そこから少し這(は)い上がったときはうれしかったし、ハードな介護の仕事も経験したので怖いものもなくなりました。

 今は娘たちも成人し、幸せそうに暮らしているので、あとは私自身が楽しく過ごせれば万々歳です。現役時代に比べると収入は減っていますが、悲観的にならずに“お金をかけずに楽しむこと”を大切にしながら生活しています

 人生の山と谷を乗り越えたきょうこばぁばさん。彼女の人生を楽しむライフスタイルには、豊かな老後のヒントがあふれている。

プチプラ食材をおいしくお料理のこと

おいしさ最優先!きょうこばぁばの食卓

 きょうこばぁばさんのインスタグラムは、目にもおいしい料理写真でいっぱい!手軽で満足度が高い料理ばかりで眺めるだけでも楽しい。

「毎日の暮らしに困っていたころ、冷蔵庫にもやししかないときがあったんです。仕方ないからだしとおしょうゆでもやしを炒めて一品だけ作りました。先が見えない日々へのイラ立ちも込めて、夫にもやし炒めを出したら『とってもおいしい』って喜んでいたんです! 私の怒りが伝わらず、気が抜けてしまいました(笑)」

 こうした過去の経験から、今でも“安くておいしい”をモットーに、食材選びやレシピ作りをしているそう。

「わが家は食べるのもお酒を飲むのも大好きな一家なので、食費を“月○万円に抑える”というような節約はせずに、食べたいものをおいしく食べるのが最優先。とはいえ贅沢(ぜいたく)をするのではなく、特売日を活用したり、おいしくて安い食材が買えるスーパーをハシゴしたりして節約を心がけています。

 数あるお店のなかでも、業務スーパー(業スー)は欠かせない存在。特に冷凍食材は日持ちするし、量も多いので本当に助かっています!

“業スー”は冷凍食材が便利でお得!

 圧倒的なコスパが魅力の業務スーパーは主婦の味方、ときょうこばぁばさん。「特に冷凍食材は1年中購入できて、何より値段が安い!お気に入りは豆腐を薄い細切りにした『豆腐皮(とうふぴ)スライス』。パスタの代わりにしたり、グラタンに入れたりさまざまな調理法を試しています」

「生より安く手に入るので野菜はもっぱら冷凍。豆類やブロッコリーなどは下処理ずみで、すぐに調理に使えて便利です」 撮影╱齋藤周造

100均のいいものはどんどん活用

「100均もよく活用しています。器類はもちろんのこと、野菜のドレスシリーズの『和風たまねぎドレッシング』は、調味料として常備。ノンオイルで、玉ねぎとしいたけやしょうゆで味の基本ができているので、オリーブオイルやマヨネーズを混ぜてアレンジして使います」

「ダイソーの耐熱ガラス保存容器は、電子レンジの加熱にも使えるスグレモノ。価格は100円以上ですが、買って損はないです」 撮影╱齋藤周造

インスタでも話題!きょうこばぁばのおすすめ活用レシピ

●豆腐皮シュウマイ

 豆腐皮スライスは解凍する。ボウルに豚ひき肉、玉ねぎ、つなぎの片栗粉と塩(あれば花椒塩)を混ぜ合わせ、ひと口大に丸める。フライパンにクッキングシートを敷き、餡(あん)を並べ、豆腐皮を上にのせる。餡の上に枝豆かグリーンピースをのせる。クッキングシートとフライパンの間に水を入れ、フタをして10分ほど蒸せば完成。蒸し器いらずなのもうれしい。

包まず豆腐皮をのせるだけ!

●そら豆のチーズ焼き

 ピザ用チーズをフッ素樹脂加工のフライパンに敷きつめ、上に冷凍のそら豆を適当に散らし、さらに上にチーズを適量ふって火にかける。粗びきこしょうで味をととのえればできあがり。ビールにもワインにも合う超カンタン料理!

冷凍そら豆とチーズの相性バツグン!

プチプラと名店アイテムを上品MIXファッションのこと

グレイヘアデビューでおしゃれが楽しくなった

 最近ではファッション誌の取材を受けるなど、その着こなしも注目されているきょうこばぁばさん。インスタでもアクセサリーの選び方や、シーズンごとに買うプチプラ服などが「シニアファッションの参考になる」と人気。

「シーズンが変わる時期に、ユニクロ、GU、ZARAなどファストファッションのお店をチェック。毎回必ず服を買うわけではありませんが、いい色はすぐになくなってしまうので、早めのチェックは必須」 撮影╱齋藤周造

買い物をするときは、自宅にある服やアクセサリーとの相性を考えながら選ぶようにしています。例えば、無地のニットを買う場合、家にある柄物のスカーフと合わせようとか、パールのネックレスを重ねづけすると華やかになりそうとか、頭の中でシミュレーションすると失敗しにくいですね」

 また、最近は年齢とともに“似合う色”が変わってきたそう。

「昔は黒を好んで着ていましたが、数年前から黒が似合わなくなってきたんです。今は、赤やヒョウ柄など派手なトップスがお気に入り。実は白髪染めをやめてから、“グレイヘアに似合うファッションを探す”という目的ができて、またおしゃれを楽しめるようになったんです。新たな自分を発見した気分ですね」

 変化する自分に合わせてテイストを変えるのも、おしゃれの醍醐味(だいごみ)!

●パールアクセは大人のおしゃれに欠かせません!

「首元にネックレスやスカーフをつけることが多いです。小物をつけ替えることでイメージが変わって、いろんな雰囲気を楽しめます。自分の結婚式で身につけたパールのネックレスは、今でも愛用しています」

「首元にネックレスやスカーフをつけることが多いです。小物をつけ替えることでイメージが変わって、いろんな雰囲気を楽しめます。自分の結婚式で身につけたパールのネックレスは、今でも愛用しています」 撮影╱齋藤周造

ユニクロはシーズンの初めに新作をチェック

「シーズンが変わる時期に、ユニクロ、GU、ZARAなどファストファッションのお店をチェック。毎回必ず服を買うわけではありませんが、いい色はすぐになくなってしまうので、早めのチェックは必須」

ヘアスタイルはツーブロックのグレイヘア

「髪型はずっとショートカット。そして最近、なじみの美容院でサイドを刈り上げてもらい、ツーブロックにしました。シルエットと髪色にメリハリが出て、とても気に入ってます!」

「髪型はずっとショートカット。そして最近、なじみの美容院でサイドを刈り上げてもらい、ツーブロックにしました。シルエットと髪色にメリハリが出て、とても気に入ってます!」 撮影╱齋藤周造

●Zoffだけでなく30年前に買ったブランドメガネも現役

「メガネは自分自身を表す重要なアイテム。その日のファッションに合わせたり、会う人のイメージに合わせたりするのが楽しい!リーズナブルなメガネが手軽に買えるようになってうれしいですが、30年前に買った老舗メガネ店・白山眼鏡店のメガネは今も現役。昭和レトロな雰囲気がおしゃれ度をアップ」

「メガネは自分自身を表す重要なアイテム。その日のファッションに合わせたり、会う人のイメージに合わせたりするのが楽しい! リーズナブルなメガネが手軽に買えるようになってうれしいですが、30年前に買った老舗メガネ店・白山眼鏡店のメガネは今も現役。昭和レトロな雰囲気がおしゃれ度をアップ」 撮影╱齋藤周造

新しいことにトライする日々の暮らしとこれからのこと

応援団は家族!SNS・“ユーチュー婆”活動

 きょうこばぁばさんは“人との交流の場”として、以前からインターネットを楽しんでいた。

郵便局の放出品をお得にゲット! 撮影╱齋藤周造

「'90年代後半から'00年代に、大好きなアーティストのファンサイトを作って公開していたんです。凝ったものではなかったけど、ファン同士でコミュニケーションをとるのがとても楽しかったのを覚えています。

 それ以降、ミクシィやブログを経て、10年ほど前からインスタに料理写真をアップするようになりました。それから、娘婿のハマケンが私をラジオのゲストに呼んでくれてインスタの宣伝をしてくれたり、私の投稿をリポストしてくれたりしてサポートしてくれます。彼も含めて、家族は私の活動を応援してくれていますね」

 彼女は「親の七光ならぬ、子の七光ですね」と笑顔を見せる。

私たちビートルズ世代は、デジタルツールを敬遠しがち。でも、今『できない』と諦めると、本当に何もできなくなってしまう。“外”とつながっているためにも、子どもや孫に頼らず、何事も自分でやるように心がけています」

本当にやりたいことに挑戦するのがシニアの醍醐味

 年齢にとらわれず“自分らしさ”を大切にするきょうこばぁばさんは、老いをネガティブにとらえない。

「子育てが終わったシニアには、自分が本当にやりたいことにトライできる、という強みがあります。ときには、鏡を見て『年をとったなあ』と思う日もありますが、介護の仕事で年上のおじいさんやおばあさんと話したり、娘世代の若い人と話したりすると、自分の年齢を忘れる瞬間があるんです。私にとって、SNSやオンライン、対面でも、さまざまな世代の人と交流を持つのが、気持ちの若々しさを保つ秘訣かもしれませんね

 これからも臆せず何でもトライしたい、と目を輝かせる。

「例えば、手作りのアクセサリーブランドを立ち上げたり、飲食店を間借りしてお料理教室を開いたり……介護の仕事も再開したいですね。チャレンジしたいことが山ほどあって困ってます(笑)」

“発信”と“交流”で若さをキープ

 YouTubeチャンネル「きょうこばぁばライフ」では、料理動画や“最近買ったもの”などさまざまな動画を配信中

YouTubeチャンネル「きょうこばぁばライフ」では、料理動画や〝最近買ったもの〟などさまざまな動画を配信中

 フォロワー3万人超のインスタグラムアカウント(@kyokoba_ba)。彩り鮮やかな日々の料理写真やシニアの着こなし投稿がズラリ!

フォロワー3万人超のインスタグラムアカウント(@kyokoba_ba)。彩り鮮やかな日々の料理写真やシニアの着こなし投稿がズラリ!

お話を伺ったのは……

きょうこばぁばさん:
1956年生まれ。2人の孫がいる“ばぁば”としてSNSで料理やファッション関連の情報を投稿して話題に(本名非公開)。娘はモデルのAgathaさん、娘婿はミュージシャンで俳優の浜野謙太さん。現在「ESSE online」にてコラムも連載中。

〈取材・文╱大貫未来(清談社)〉