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 加齢によって減少する女性ホルモン。卵巣の老化で分泌が減ることで、女性にさまざまな不調を引き起こす。

食事でホルモン不足を補う!

「更年期だからと我慢してしまう人も多いですが、食事など習慣を少し工夫すれば不調をうまく乗り越えられます」

 と話すのは、日本抗加齢医学会認定指導士で栄養や生活習慣に詳しい前田あきこさん。

「加齢で減るのは心身の健康や若々しさに関わるエストロゲンという女性ホルモン。肌や髪、粘膜、血管、脳、骨などの働きをサポートしていて、不足するとさまざまな不調が現れます。

 自覚症状で多いのが肌や髪のやつれ、不眠、うつ、笑いにくくなるなど思考の変化など。その症状は多岐にわたります」

 婦人科に相談すればエストロゲンを補うホルモン剤を処方してもらえるが、まずは自分でできることから始めたい。

「特にダメージを受けやすい肌や毛髪は、材料となるタンパク質を十分にとることが大切です。ここで重要なのが朝にとること。ある調査では朝にタンパク質をとる人は筋肉など身体の組織が増えやすい傾向が見られました。

 朝に食べたタンパク質は筋肉や肌、髪に変換されやすいということ。1日のタンパク質摂取目安の半量である25〜30gを朝食でとりましょう。スライスチーズ2枚で約5g、ハムエッグで約10g、納豆1パックで約7g、ヨーグルト100gで4gが目安です」

 女性ホルモンが不足すると唾液が減って食べにくくなり、食欲が低下して栄養不足になる人が少なくない。タンパク質が足りないと身体は筋肉や肌、髪などを分解してタンパク質を生み出し、やつれを加速させてしまうため要注意だ。

「朝食でタンパク質をとったら昼と夜は自分の好きなものを食べてOK。好きな食事で笑顔になることも不調改善には大切です。女性ホルモンの不足で脳の働きが低下すると、刺激に鈍感になったり、楽しいと感じにくくなることも。

 好きな食事や趣味など意図的に楽しい刺激を与えると、脳の活性化のスイッチを入れることができます」

 中でも食事は和食のお出汁や洋食の煮込み料理のようなほっとするうまみ成分を楽しんでほしいと前田さん。

「更年期は自律神経のバランスが崩れやすくなります。うまみ成分は副交感神経を優位にしてリラックス効果も期待できるので、自律神経の改善に最適です」

料理の匂いでも女性ホルモンアップ

 女性ホルモンの不足と聞いて、大豆イソフラボンが思い浮かぶ人もいるかもしれない。

「実は大豆イソフラボンの恩恵に授かれるのは2人に1人だけ。大豆イソフラボンは腸内細菌の作用で女性ホルモンと似た働きをするエクオールに変わりますが、腸内細菌の種類は個人差がありエクオールを作り出せない女性も多いのです」

 そこでおすすめなのが、誰でも効果を得られるアロマテラピー。植物から抽出した精油の香り成分が女性ホルモンと似た働きをしてくれるのだ。

「研究では、精油の香りを鼻から吸い込むと脳の下部にある嗅球(きゅうきゅう)が直接刺激されてホルモンバランスの安定につながることがわかっています。

 おすすめの精油はクラリセージやゼラニウム。ローズなどに比べると手に入りやすく安価なので積極的に活用しましょう」

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 嗅覚からの刺激といえば、アロマだけでなく、食べ物の匂いも有効。思いがけない食べ物の香りが、脳の刺激につながるのだ。

「例えば、蕎麦屋でいきなりスパイシーなカレーの香りが漂ってきたり、お吸い物に鼻を近づけたらゆずの香りがしたりなど、意外な香りは脳を刺激して活性化のスイッチになってくれます。

 自分で作ると驚きが得られないため、外食も上手に取り入れるのがコツ。自炊にこだわってストレスをためるより、手間要らずでおいしい外食を楽しむのが、女性ホルモン不足の不調時にはおすすめです」

 不調が長く続く更年期。少しでもラクに過ごすためにできることから試してみたい。

【食べ方】ちょっとしたコツで効果抜群!

 朝にタンパク質をしっかりとれば、昼と夜は好きな食事を楽しんでOK。お出汁のようなほっとするうまみ成分は不調改善に有効。

朝食に2種類以上のタンパク質

 朝食はヨーグルトと卵、チーズとハムなど、2種類以上のタンパク質食品をとると、体内でタンパク質が組織に使われやすくなるのでおすすめ。食欲がない日に備えて、いくつか組み合わせを考えておくのも便利。

「食欲がない朝は高タンパク質ヨーグルトにプロテインを入れただけで済ませることもありますよ」と前田さん。コンビニなどで売っているプロテイン入りのスープなども活用したい。

朝食に2種類以上のタンパク質(イラスト/伊藤和人)

うまみ成分でスイッチオン

 昼食や夕食では好きなものを食べてOK。中でも、ほっとするようなうまみ成分が豊富なお出汁や煮込み料理がおすすめ。

 一方、甘いものや脂っこいもののとりすぎはNG。糖質や脂質は一時的に気分がよくなるものの、すぐに虚脱感や情緒不安定を招く。

「繰り返せば自律神経のバランスを悪化させる可能性もあるので要注意です」

うまみ成分でスイッチオン(イラスト/伊藤和人)

【嗅ぎ方】女性ホルモン不足の強い味方に!

 アロマテラピーや意外な食べ物の香りで脳を刺激すると、ホルモンバランスの安定や脳の活性化につながる。

アロマで女性ホルモンを補う

 精油の中でもクラリセージやゼラニウムがおすすめ。安価で手に入るので、気軽に日常生活に取り入れることができる。直接嗅ぐのはもちろん、マスクに垂らしたり、枕元に置いたりと好きな方法で楽しんで。

「同じ香りでもメーカーによって若干香り成分が異なるので、自分と相性のいい商品を探してみてください」

アロマで女性ホルモンを補う(イラスト/伊藤和人)

意外な匂いで脳を活性化

 外食やデパートのお惣菜など、想定外の香りを嗅いで脳を刺激しよう。食事時に商店街やレストラン街などを散歩して、いろいろな料理の香りを嗅いでみるのもおすすめ。

「自炊にこだわらずにうまく外食を取り入れて、作ってもらった料理を楽しむのがコツです」

意外な匂いで脳を活性化(イラスト/伊藤和人)
前田あきこさん●対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿伊勢丹ダイエット外来管理栄養士。日本抗加齢医学会認定指導士。日本アロマ環境協会アロマテラピーインストラクター。
教えてくれたのは……前田あきこさん●対馬ルリ子女性ライフクリニック銀座・新宿伊勢丹ダイエット外来管理栄養士。日本抗加齢医学会認定指導士。日本アロマ環境協会アロマテラピーインストラクター。

(取材・文/井上真規子 イラスト/伊藤和人)