初心者には「靴下沼といわれる靴下からぜひ。1つ編んだらもう片方も編むので復習になりオススメ」(入江さん)

 通常は冬に盛り上がり、春には沈静化するという編み物ブームが6月に入った現在も続いている。

毛糸が売り切れる事態に

人気ガールズグループ『LE SSERAFIM』メンバー・SAKURAさんの影響で、かぎ針編みをする若い人たちがどっと増えました。季節的な流行ではなく本格的なブームになったのでは……といわれています。編み物界隈では長年、高齢化を感じていたので、若い人たちが増えてくれてうれしいです」

 とは、ハンドメイドのサイト『てといと』を運営する入江由美さん。SAKURAこと、元「HKT48」の宮脇咲良の影響力が大きいという。100円ショップでは毛糸が売り切れる事態となり、大手手芸店のユザワヤでも……。

「これまで毛糸に触ったことがないような若い方々が、宮脇さんのスマホ画像を手に“これ作れますか”と売り場にやってこられます。去年の秋口くらいから今もまだ続いていて、こんなことは初めて。

 ユザワヤでは春夏用サマーニットなどの新商品がそろいましたので、お待ちしております」(ユザワヤ広報・飯高さん)

 若い世代の参入により業界が活気づいているようだ。実際に、宮脇の影響で編み物を始めたという25歳の女性に話を聞いた。

「SAKURAちゃんが好きでかぎ針編みを始めました。私はYouTubeやTikTokを参考に見ながらイヤホンや『たまごっち』を入れる巾着を、50代の母はアクリルたわしやコースター、バッグなどを作って親子でハマっています。休みの日で、毛糸と時間と元気があるときは、気づくと一日中編み物をしていたりしますね(笑)」

編み物で“フロー状態”に

 タレントの秋元才加も今年1月、Xに作りかけの花モチーフと共に《編み物が私の精神にとても良い影響を与えています》とポスト。若い世代にとって編み物が“創作活動と癒しを兼ねる素敵な趣味”となりつつあるのを感じる。

今年1月にはオリジナルニットブランドもスタートした宮脇咲良(本人のインスタグラムより)

「編み物には心身のリラクゼーションやストレス軽減の効果があり、現在“編み物療法”“ニットセラピー”として注目されています」

 と教えてくれたのは、ハナビューティークリニックの古賀愛子院長だ。

「リズミカルで適度に複雑な手作業である編み物は“フロー状態”という高い集中状態に入りやすい活動です。フロー状態は瞑想に似た効果があり、脳内の幸せホルモン、セロトニンの分泌を高めてくれます。

 また、編み目を数えたり段取りを考えたり、指先を使った細かな運動でもあることから、英国ではアルツハイマー型認知症の発症リスクが最大35%減少したという研究結果も出ています」(古賀院長)

 欧米では“天然の抗うつ薬”とも呼ばれる編み物。

「“無心に編むこと”や“編んでいる時間そのものが好き”という声をよく聞きます。実際、入院中にやることがなく始めた編み物で、とても癒されたという声も聞きました。超アナログですが、ひと目ひと目、一段一段作っていくことで仕上がる。どんな小さなものでも自分で作れたことで達成感がわき、自己肯定感がアップしますよ」(前出・入江さん)

 材料費も安くでき、心身も健康になる。季節に関係なく編み物ブームに乗っておくべき!


取材・文/山部和歌子