
厚生労働省は7月25日、2024年の日本人の平均寿命を発表した。女性は87・13歳で、最新の海外統計を基にした国別の比較では、日本人女性が40年連続の世界1位に。
日本人女性の平均寿命が世界一の理由について、老年学を専門とする東京都健康長寿医療センター研究所・研究副部長の村山洋史さんに聞いた。
「要因としてはさまざまなものがありますが、まずは国民健康保険や介護保険といったアクセスしやすい制度が充実していることが挙げられます。何かあったときにはすぐに医療や介護を受けられる安心感がありますよね。
食生活もよくいわれていて、一汁三菜を基本とした日本食を食べている人のほうが将来の死亡リスクが低いという研究結果はたくさん出ています。経済格差が大きい国は死亡率も高いといわれ、日本はもともと格差社会ではなかったので、長寿の国であることにつながっているといえます」
男性の平均寿命が短いのは世界共通
女性は世界1位だが、日本人男性の平均寿命は81・09歳。2023年から順位を1つ落とし、スウェーデン、スイス、ノルウェー、イタリア、スペインに次ぐ6位だ。なぜ男女で差があるのだろうか?
「男性のほうが平均寿命が短いのは日本に限らず、世界共通です。男性のほうが基礎代謝が高いので、その分身体に負担がかかり、寿命が短いといわれています。日本でいうと、男性は女性よりもタバコを吸う人・お酒を飲む人が多く、そういった生活習慣は死亡リスクが高い。
健(検)診受診率を見ても、女性のほうが高いです。健康意識の高さや病気を予防するための行動から、女性は男性に比べて長生きすると思われます」(村山さん、以下同)

日本人女性の平均寿命は40年連続で世界1位をキープし続けているが、それも今後は雲行きが怪しいと村山さんは話す。
「男性の平均寿命が長いスウェーデンやノルウェーなど北欧は税率は高いですが、その分医療福祉や教育の制度が整っていて格差も少ないです。日本では格差が広がってきていて、状況が昔とは変わっています。
今は物価も上がり、お米も高騰して買いづらくなるなど生活不安も高まっています。おそらく、日本人の寿命の伸びはどこかで鈍化していくと思いますね。なので、世界1位の座は安泰とはいえないでしょう」
健康寿命を延ばす生活を送る秘訣
健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる、健康寿命を延ばす秘訣は?
「運動、生活習慣を見直す、健康診断を受けて未然に防ぐといった基本的なことを大切にしてもらえれば。
また、地域のつながりが深いことも長寿に関係しているといわれます。友人と交流したり、好きなスポーツのサークルに入ったり、人との関わりを積極的に持つと、よりいいと思います」
女性は、男性に比べて人と接することで幸福感を得やすいことが心理学の研究でわかっている。
長寿だけでなく幸せな生活のために、人と交流しようと一歩踏み出すのもいいかも?