
「鼻の下が長くなった」「唇のボリュームが減った」「口角が下がって不機嫌顔に」……口もとのお悩みはなぜ生まれるのだろうか。
意識・メイク・ケアで口もとから若々しく
「まず、顔の筋肉が衰え、皮膚の緩みやたるみが進むことが原因で口角が下がり、人中(鼻の下の溝)ものびて口周りがもたついてきます。
さらに、加齢による顔の骨の萎縮で、鼻の穴や小鼻の広がりを招き、頬も下がってほうれい線が深くなる。歯茎もやせてくるので上唇が薄くなり、それが縦ジワの原因にもなるのです」
そう話すのは、東京・巣鴨のシニア世代専門写真館のメイクアップアーティストで、日々多くのシニアと向き合う鈴木みほさん。
口もとの老け見えの原因は一つではなく、さまざまなことが連動した結果起こると話す。そんな人こそ口もとのメイクを意識してほしいと指摘。
「口もとをあまり目立たせたくないという意識からか、ナチュラルな口紅を選ぶ方が多いですが、顔の下半分の余白が増えるからこそ、発色のいい口紅などで血色を補い、ツヤとハリ感をプラスすることで若々しい印象になります」
今回は、いつものメイクにほんのひと手間加えるだけで見違える口周りのメイクテクを教えてもらった。
「唇は“メイクした感”が出やすく、難しいメイクテクニックも不要なパーツ。さらに色をのせると気持ちも明るくなります。口もとをおろそかにすると恐ろしい勢いでそこから老化が進みますから、まず、口紅から意識してみましょう」
大人女子の“口もと”悩み
□たるみによる口角下がり
□ほうれい線
□唇のふちの縦ジワ
□唇のボリューム感
□人中が長くなる
□唇のくすみ、シワ
お悩み1「ほうれい線隠しには小鼻の横に光を仕込む」
ほうれい線が深くなるほど濃くなる影には、コンシーラーで明度をアップ。
(1)肌より一段明るいコンシーラーで小鼻の脇に上向きの三角形を入れる
(2)(1)の縁を指やスポンジでぼかしてなじませる
(3)頬のもたつきがなくなり頬が上がって見える

使ったのはコレ
薄膜を張るように肌を自然にカバーするコンシーラー。
お悩み2「頬のたるみは“笑顔半分”チークで引き上げる」
顔の下半分のボリュームはチークで引き締め。ニッコリ笑って頬の半分の位置にチークを入れると頬の位置が上がり、血色感もアップ。
(1)笑顔をつくったら頬の半分の位置にライン状にチークを引く
(2)笑顔のまま(1)をなじませる。広げすぎると顔を大きく見せるので注意

使ったのはコレ
アディクション チークスティック 06(※現在は廃盤)
チークはツヤ感のあるクリームかリキッドタイプがオススメ。

お悩み3「口角下がりはリップラインで補正をかける」
やせた唇はオーバーリップで解決。下がった口角を強調しないために、リップラインは口角まで引かないのがポイント。
(1)ややオーバーリップに口角を残してラインを引く
(2)(1)で塗ったラインを指でぼかして曖昧にする

使ったのはコレ
ベアミネラル ジェン ヌードリップライナー オン ポイント
ヌードカラーにマッチするリップライナー。

お悩み4「やせた唇にはあえてぼかしてティントを塗る」
リップは唇全体にべったり塗るのではなく、唇の真ん中を中心にスタンプ塗りすると立体感が生まれて若々しくなる。
(1)下唇の真ん中に口紅を塗る
(2)上下の唇を合わせて上唇に色を移す
(3)全体に指でなじませ自然にぼかす

使ったのはコレ
シロップのようなツヤのある発色で長時間落ちにくい。
お悩み5「人中ののびと長くなる鼻先は大胆シャドウで立体感を」
人中だけでなく鼻先も垂れて長くなる。短く見せたい部分にブラウンのパウダーを仕込んで目くらまし。
(1)鼻の頭、鼻の下、上唇の山、下唇の下に茶のシャドウを入れる
(2)(1)を指でそっとなじませて自然にぼかす
(3)フェイスラインにもシェーディングを

使ったのはコレ
これ一つで眉、シェーディング、ノーズシャドウと使えて万能。
※使ったメイクアイテムはすべて私物です
日々の意識で口もとはグッと変わる
口もとの若見えには「普段から意識して過ごすことが大切」と鈴木さん。
「70代や80代でも口もとが若々しい方は笑顔が多い印象です。口角が下がらないよう、日頃から口角を意識して上げるようにしましょう。唇をすぼめたり巻き込むクセも老け見えするので気をつけましょう」
鈴木さんが実践するオススメのケアも教わった。
「目尻の笑いジワは素敵ですが、口もとの縦ジワは少しでも防ぎたいですよね。縦ジワがある方の口もとはたいてい皮膚が硬くなっているので、日々、唇周りをマッサージしてほぐします」
シャープな印象も大切。
「フェイスラインや頬も朝晩、リンパを流してもたつきを解消。50歳を過ぎたらぜひ習慣化してほしいです」
ケア1:口角は常にギュッと上げる
「人と話している間だけでなく、テレビやネットなどを見ているときも意識的に口角を上げる習慣を」。口角が下がっている人は筋肉が硬くなりがちなので、最初は鏡を見ながら練習を。
(1)慣れない人は意識するために口角に軽く指を添えて
(2)上にギュッと口角を上げる。頬も一緒にグッと上げて

ケア2:頬肉をギュッと引き上げてたるみを改善
「ほうれい線が深い人は頬が硬い人が多い」と指摘する鈴木さん。スキンケアで肌を整えたら、鼻からこめかみに向かって頬を持ち上げるように肌を滑らせて、リンパの滞りを流す。
(1)クリームなどを塗ってから、鼻の両脇に手を添える
(2)こめかみに向かって2~3回程度、やさしくなで上げる

ケア3:リンパを流してフェイスラインすっきり
朝晩のスキンケアの最後に。耳の下から鎖骨にかけてマッサージでリンパを流すことで、硬くなりがちな筋肉のコリがほぐれ、顔の下半分のもたつきやたるみがスッキリ改善。
(1)摩擦を防ぐために必ずクリームなどをつけてから行う
(2)耳の下から鎖骨に向かって上から下にやさしく手を滑らせる

ケア4:リップのザラつき、縦ジワはマッサージでオフ
「唇のケアは、唇の境目までしっかり行うことで縦ジワを予防します」。クリームや美容液を使ってマッサージしてほぐすことで、皮膚の硬さやたまった角質のザラつきを解消。
(1)唇を横に開いてのばしてからクリームなどを塗り込む
(2)上唇の境を端から端までやさしくくるくるマッサージ

鈴木さんオススメ「リップアイテムの選び方」
「くすみをカバーするにはブラウンベージュがイチオシ。オレンジがかったブラウンもオシャレに見せます」と、自然に悩みをカバーするブラウン系をオススメする。
「ただ、いちばん大事なことは似合う・似合わないで制限せずに好きな色を楽しむことです!」
ケイト リップモンスター 04 パンプキンワイン/1540円
くすみを補整しながら血色感をプラス。長時間持続して落ちにくい。肌なじみのいいシアーなテラコッタブラウン。
&be クレヨンリップ ナッツブラウン/1980円
なめらかな使い心地で小回りがきくクレヨンタイプ。リップライナーとしても口紅としても優秀。ロングラスティング処方。
コーセーコスメサポート アップトゥーミー ハグマイリップ カラーロックプランパー005/1540円
塗って3分待つと表面にジェル膜が完成、色移りを防いでツヤのあるぷっくりとした唇が続く。深みのあるブラウンレッドでおすすめ。

カネボウ ウェアリングキープルージュ 06 スモーキーレッド/3850円
鮮やかな発色が唇にピタッときれいに密着。ひと塗りで唇のくすみをカバーして、肌の色を明るく演出。落ちにくいのも◎。
ナリス化粧品 Vieta ジューシーセラム ティントリップ02BR アーバンブラウン(オレンジブラウン系)/1760円
加齢で薄くなった唇に厚みのあるツヤ感を与える大人ティント。植物由来の保湿成分で潤いも持続。

※価格はすべて編集部調べ、税込み表示です。
教えてくれたのは……

望月みわさん(61)●唇がやせてくすみも出てきたという望月さん。「ハチミツとスクラブを使ったマッサージなどをしてケアしていますが、薄くなってきた唇をふっくら見せるテクを知りたいです!」

鈴木みほさん●シニア世代専門の写真スタジオ「えがお写真館」所属のメイクアップアーティスト。各種メディアへの出演やブランドのプロデュースにも携わる。近著に『50代から楽しむメイクの教科書』(成美堂出版)が。
取材・文/荒木睦美