テレビを見ながら独り言を言うのも脳にはいい。周囲を気にしつつやってみよう ※写真はイメージです

「実は“聞く”より“話す”ほうが脳は活性化します。ところが、年を重ねるにつれ、人と話す機会も減ってくる。すると、言葉が出てこなくなったり、物覚えが悪くなったりとどんどん頭の回転が悪くなるのです」

 そう話すのは脳科学の第一人者、加藤俊徳先生。今回実践したいのは“遅口ことば・早口ことば脳活性法”。

「早口ことばは脳トレや口腔フレイルの予防として注目されていますが、遅口ことばで音読することによって、その何倍もの効果が生まれます」(加藤先生、以下同)

認知症予防にも最適

 読むだけでなく、その速さをあえてゆっくりにするだけで、脳が活性化するという。

「遅口ことばは、口の周りの筋肉だけではなく、全身を使い、滑舌アップや集中力の高まりに効果があります。実際に、本気でやると、集中するし、疲れると思います」

 言い切るのに時間がかかるので、腹筋が鍛えられ、声がしっかり自分に届くことを実感する。

「自分の声を自分で聞く。これが非常に脳活にはいいんですね。思考系、伝達系、聴覚系も刺激して、記憶や情景が鮮明になります。ですから認知症予防には最適です」

 このように、口、舌、喉、腹筋などの筋肉を柔軟に使いつつ、脳全体を刺激することができるのだ。

「助詞を強調して読めば、さらに効果はアップします。“と・の・に・を・は”などを強調して読んでみると、自分の声が聞こえやすくなり、言葉の意味がはっきりと脳に届きます。これが脳の記憶力を高めるのです」

 普段、本を音読するときなども助詞を大きく強く発音してみよう。

「自分にとって意味のある好きな文章を口にすることで脳はさらに活性化します。本や雑誌などからでもぜひお気に入りのひと言を見つけて繰り返してみてください」

 声に出して言いたい加藤先生おすすめの「ことば(10)」を紹介。

「脳はいくつになっても成長します!口を動かすだけで脳を活性化できるのですから、ぜひこの音読法を試してみてください」

遅口ことばから始めて「脳の省エネ」

遅口ことばの脳活効果

★思考系を刺激
脳に酸素が回り基礎体力がアップして思考の持続性が増す

★聴覚系を刺激
自分への命令が持続して、聞く力が強化され、自発性も出る

★感情系を刺激
話している最中に、イメージが思い浮かびやすくなる

★運動系を刺激
呼吸筋や腹筋が鍛えられ、身体運動となり、バランス力が向上する

★伝達系を刺激
顔の筋肉も鍛えられ、表情が豊かになり表現力が上がる

★記憶系を刺激
記憶力が鮮明になり、脳全体が活性化する

★理解系を刺激
じっくり意味をとらえ、理解力がアップする

 遅口ことばを2回、3回と繰り返すと、どんどんきつくなってきます。ゆっくりと声を出すときには口先だけでなく体幹も使っているからです。ですから、脳が全身へ持続的に指令を出すことにより、脳も身体も酸素を消費するエネルギーがやればやるほど必要となり、これが「遅口ことば」の脳のエネルギー増大効果につながる。

脳のゴミ、アミロイドβが脳内に蓄積すると、脳細胞が活発でなくなり、数も減少する

早口ことばの脳活効果

★運動系を刺激
口先と舌を早く動かすため滑舌がよくなる

★伝達系を刺激
脳から口へ早く伝えようとすることで、メッセージを明確に伝える力、命令を伝達する力が上がる

★記憶系を刺激
正確に暗記する力が強化され、短期記憶が刺激される。また、繰り返し音読することで、記憶力がアップする

★思考系を刺激
「早く言う」という目標に向かって集中力が高まり、瞬発力が向上する

 遅口ことばから始めると、どんどんラクに、自ずと早口ことばが言えるようになります。何度も音読することで、口周りの筋肉が文章と連動し、言いやすくなることで脳も省エネに。つまり、最初は言いにくいことに困難さを感じることで脳は活性化しますが、慣れてくると脳はラクなほうを選択するのです。これが「遅口ことば」から始める脳の省エネ効果。

「さらに脳活アップ」のポイント

・まずは遅口ことばから始める

・声をなるべく張る

・はっきりと助詞を強調して読む

・抑揚をつけ、変化をつけて読む

・脳が活動しだす朝の時間帯に行う

練習してみよう!

 色のついた助詞を強調しながらお腹から声を出して遅口ことばから始めてみよう。民謡を読むように抑揚をつけてもOK。自分の声を脳に響かせるように、しっかり読むこと。ゆっくりとことばを言い切ったら、徐々に速度を早くして。5段階程度にイメージして遅口から早口へ移行すれば効果アップ!

マンネリ脳予防には身近な人カバン持ち

脳のダメージによる影響は自律神経や運動神経にも及び疲労状態に※写真はイメージです

記憶力がアップして脳が活性化する遅口ことば・早口ことば10選

 声に出して言いたくなる加藤語録をラインナップ。まずは口を動かすことを楽しんで!

効果がアップする読み方

(1)普段どおりの話し方で音読してみよう

(2)次に、助詞を強調しながらゆ~っくりと音読してみよう。

(3)次に、できうるかぎりに早く音読してみよう。

Stepアップ

 ゆっくりをもっとゆっくり、早くをもっと早くを心がけてみて。自分の中で普通に話す速さを「1」とし、倍の長さ、さらにその倍の長さと遅く読み、2倍速、3倍速と早く読むなど、5段階程度で速さを切り替えて読んでみよう

運動も意識して

ことば(1)

運動不足深刻化 認知症発症率上昇

加藤Dr.豆知識:買い物や掃除など日々の生活の中にも運動につながる行動を探して!

ことば(2)

脳トレノート記録し記憶定着

加藤Dr.豆知識:やったことを振り返る時間をもつことで記憶力が向上!

ことば(3)

自爆型 他律型 自己認知自己肯定感アップ

加藤Dr.豆知識:自分を卑下せず、他人に依存せず、自分で自分を褒めてあげよう!

※写真はイメージです

ことば(4)

日中重々集中し かくしゃく働き睡眠時間削らない 優れた時間管理 生産効率最大化

加藤Dr.豆知識:脳活性化によい8時間睡眠を確保するために日中は、てきぱきと動こう!

ことば(5)

健康寿命おびやかす骨粗しょう症予防 老若男女朝散歩習慣化

加藤Dr.豆知識:骨密度を下げないよう運動や日光浴の習慣を

脳に幸せを蓄積し老化防止

ことば(6)

自問自答し 自分鼓舞する ひとり言達人

加藤Dr.豆知識:肯定的なつぶやきが、脳を活性化させ集中力もアップさせる

ことば(7)

日常から非日常見つけて脳喜ばす

加藤Dr.豆知識:暮らしの中の「非日常探し」で、普段見えていないものを発見するくせを

ことば(8)

ささやかな感謝 幸せ言葉 自分褒める言葉

加藤Dr.豆知識:ささいなことでもありがたがることで脳に幸せが蓄積する!

ことば(9)

「喜怒哀楽」考え 今日出来事 できるだけ列挙し 明日意欲

加藤Dr.豆知識:感じたことを1日振り返って書き出してみれば脳の老化防止に

ことば(10)

一昨昨年、一昨年、昨年より もっと学ぼうする心がけもち 百歳健康長寿

加藤Dr.豆知識:大人こそ自分に合った勉強法を見つけ、毎日10分でも学びの継続を

加藤俊徳先生 脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。現在、加藤式MRI脳画像診断法(脳個性診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。著書多数。近著に『脳がみるみる元気になる 早口ことば遅口ことば』(宝島社)がある。
教えてくれたのは…加藤俊徳先生 脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社脳の学校代表。昭和医科大学客員教授。脳科学・MRI脳画像診断の専門家。米ミネソタ大学放射線科でアルツハイマー病やMRI脳画像の研究に従事。現在、加藤式MRI脳画像診断法(脳個性診断)を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。著書多数。近著に『脳がみるみる元気になる 早口ことば 遅口ことば』(宝島社)がある。
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