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「全身に血液を送る血管は19歳をピークに年齢とともに老いていきます。ピーク時の血管は非常に弾力性があり、血管の内部から多くのホルモンが出て、血管内に血栓ができるのを防いでいます。血管壁も非常にきれいで、新築の家の水道管のようなもの。

 でも家も長く住むうちに水道管の中に、汚れがたまったり、さびついたり、あるいは水道管自体が割れてしまったりしますよね。同じように血管も年をとると長い経過の中で、どんどん老いていきます。そうなると血液が流れにくくなって、血管が硬くなる動脈硬化や狭心症、心筋梗塞、大動脈瘤などの心臓疾患を引き起こし、結果的に寿命が短くなります」

 と話すのは、心臓血管外科医の渡邊剛先生。そんな経年劣化する血管を、健やかに保つ方法があるという。

血管のピークは19歳!そこからは老いる一方

「血管の中を通っている血液をきれいにすることです。このきれいな血液のことを“善玉血液”と私は呼んでいます。血液自体がきれいであれば、血管がボロボロになっても長持ちさせることができます。脱水ぎみになっていない、余分な脂質や糖質が含まれていない、炎症性物質も少ないなどの、いわゆるサラサラの血液ですね。

 反対に、粘りけがあり、脂質や糖質、炎症性物質が含まれるドロドロ血液が“悪玉血液”です。悪玉血液こそ、血管にダメージを与えて、病気を引き起こします」

 目指すべきは善玉血液だが、どうやったら自分の血液が善玉か悪玉かわかるのだろうか。

「健康診断の血液検査で確認できます。チェックすべき数値は“コレステロール”“中性脂肪”“尿酸”“血糖”の4つ。これらの数値が高い人は要注意です」

 これらの悪玉血液を減らすには、どうすればよいのか。

「先ほどの4つの数値をできるだけ低く維持しないといけないのですが、それには日々の食事に気を配ることです。コレステロールや中性脂肪の数値を下げるには、脂肪分の多い肉や魚、魚卵、卵の黄身といった食品を控えること。また尿酸値を下げるには、魚卵のほか、レバーやプリン体を多く含むビールなどは制限をしたほうがいいでしょう。

 さらに血糖値を下げるには、糖質が多く含まれる、デザートやお菓子は控えめにすること。ジュースや果物もあまりとらないようにしてください。果物は種類にもよりますが、果汁入りのジュースなどは糖質の吸収が早くなり、血糖値が上がりやすくなります。そのほか、小麦粉も血糖値を上げるので、なるべく避けましょう」

健康寿命を延ばすには手術をしないこと

 善玉血液をつくる具体的な習慣は次のとおり。

「第一に食事以外でも水を飲むことです。尿酸や血糖も水をたくさん飲んで、尿として出すのが健康的。食材から摂取する水分は含めず、理想は1日2l。難しい人は1回200mlを1日7~8回に分けてとりましょう。それから食事。積極的にとりたいのが、玄米や納豆、わかめなどの食物繊維。キムチや無糖のヨーグルトなど発酵食品を摂取するのもいいですね。

 ただ、身体にいいからと食べすぎないように。どんなに身体によい食品でも多めに食べると、その分、栄養過多になりますから。あとは、就寝2時間前には食事を終えていること。夜遅い食事は体内に脂肪として蓄積されて、悪玉血液になりやすいです」

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 食事だけでなく、日々の運動も欠かせない。

「運動には血圧や血糖値を下げる効果があります。日常的に、30~40分のウォーキングや、軽めの筋トレを行うと善玉血液が増えます。マラソンや負荷の高い筋トレなど、急激に無理な運動をするのは、貧血を起こしやすくなるためNGです。

 運動をした後は37~40度のぬるめのお湯で半身浴を。20~30分つかることで、血流を促進し、善玉血液をつくります」

 寿命を延ばすには、血管とあわせて血液自体をきれいに保つことが大事なわけだ。

「今は100歳、最低でも90歳までは生きたい時代。厚生労働省によると、男性は平均寿命から約10歳下、女性では約12歳下までが元気に過ごせる“健康寿命”とされています。特に高齢になると、麻酔・手術をすると合併症の発生が高まるリスクがありますから、健康寿命を延ばすには、病気などで手術をしないことが一番大事なのです。

 そのためにも、善玉血液になる習慣を身につけて、まずは病気にならない、ケガをしないことを心がけましょう」

善玉血液をつくる生活習慣

善玉血液をつくる7つの習慣

1.1日2lの水を飲む 2.血液に悪いものを控える(砂糖、小麦粉、塩) 
3.食物繊維を積極的にとる 4.食べすぎない
5.就寝2時間前に食べ終わる 6.ウォーキングや軽い筋トレなど運動をする
7.ぬるめのお湯で半身浴

善玉血液をつくる7つの習慣

適切な水分補給のタイミング

1.起床時 2.朝食時 3.仕事中など 4.昼食時 5.間食時 6.夕食時
7.入浴前後
※1日7~8杯 午前・午後に分けて1杯200mlを7~8回に分けてとるのが理想的


タバコやお酒、サウナは血管と相性最悪!

 タバコは血管そのものを傷めるため、動脈硬化のリスクに。タバコを吸って、いいことはひとつもない。また、お酒も適量を超えると血管をボロボロにする。不整脈の一種である心房細動のリスクを高めて、心臓の中に血栓ができやすくなることも。サウナに入れば、血行促進やダイエット効果になると勘違いしている人が多いが、非常に危険。

 80~100度のサウナに入ると発汗し、血圧は下がる。そこで急に水風呂に入ると、血圧が急上昇し、脱水症状が起こり、血栓ができやすくなる。若い人は耐えられても、中高年以上の人にとっては身体に悪いので控えめに。

心臓血管外科医・渡邊剛先生 ニューハート・ワタナベ国際病院院長。心臓血管外科医。医学博士。金沢大学医学部卒。東京医科大学心臓外科教授(金沢大学と兼任)などを経て、2014年にニューハート・ワタナベ国際病院を開院。2019年から6年連続で年間心臓ロボット手術の執刀数世界一。『世界一の心臓血管外科医が教える善玉血液のつくり方』(あさ出版)など著書多数

取材・文/池田純子